執筆者:クロスメディアHR総合研究所 所長 河本 英之

学歴フィルターはまだある?
学歴フィルターについては、正直なところ、まだ残っています。特に人気業界や人気企業では、全員と会うことができないためです。確率論的には、上位校の学生のほうが「人が遊んでいるときに努力してきた」「処理能力が高い」と評価されるケースが多いのも事実でしょう。
ただし、高学歴の人が「地頭が良い」と表現されることがありますが、それ以上に評価されているのは「自己肯定感」だと感じています。「頑張ればできる」という自信を持ち、過度に卑屈にならない人が多いのです。もう一つ挙げるとすれば、マルチタスク能力です。複数の科目を同時に学んできた経験が、その証明になっている場合もあります。
そうした点では有利に働くこともありますが、決して絶対ではありません。むしろ、過度なプライドを懸念されるケースもあります。また、面接に進むと、上位校の学生にはより高い期待値が設定される一方で、「中堅校だがよく頑張っている」と評価され、学歴逆転が起こることもあります。
就職活動を始めると、とくに学歴にコンプレックスを持つ学生は増えるかもしれません。しかし、過去の学歴は、編入などをしない限り変えられません。変えられるのは未来だけです。卑屈にならず、テスト対策を行い、エントリーシートを丁寧に書き、面接まで進みましょう。そこまで行けば、逆転のチャンスは十分にあります。「自分がこの企業を受けてもいいのだろうか」と悩む必要はありません。受けるかどうかを決めるのは、あなた自身です。
近年では、大学名だけでなく、高校時代の経歴を見る企業も増えています。大学全入時代となり、AO入試や推薦入試の拡大により、大学名が必ずしも学力や努力量を示さなくなってきているからです。進学校出身であることや、受験の機会にチャレンジしてきた姿勢を評価する企業もあります。進学率の高くない高校から有名大学へ進学した場合、その努力が高く評価される可能性もあるでしょう。

スカウトメール、口コミサイトは使うべき?
10年ほど前から、登録すると企業からスカウトメールが届く新卒向けサービスも広まっています。多くのオファーが届くため、受け身の学生向けという印象もありますが、自身の経歴が企業からどのように評価されているかを知りたい場合には、利用してみる価値はあるでしょう。
一方で、就活エージェントの利用には注意が必要です。「楽だから」という理由で使う学生も多いですが、エージェントは、学生を企業に紹介し、入社が決まった時点で報酬を得るビジネスモデルです。企業に入社させることがゴールである点を理解したうえで、活用する必要があります。
また、就職サイトで検索して上位に表示される企業が、必ずしも良い会社とは限りません。掲載順位は広告費で決まっていることもあります。口コミサイトについても、全面的に信頼するのは危険です。ネガティブな情報のほうが多く、内容が古いケースも少なくありません。特に、内定後に口コミを見に行くことはおすすめできません。不確かな情報によって、せっかくの決断が揺らいでしまうからです。
現代は、情報があふれ過ぎている時代です。何が正しく、何が間違っているのかが分かりにくくなっています。その中で、自分にとって本当に大切な「軸」を見つけられるかどうかは、自分自身の力にかかっています。これは、頭の良し悪しの問題ではありません。軸を持たずに情報に触れ続けると、簡単に振り回されてしまいます。
先生や両親、エージェントなど、さまざまな人が善意でアドバイスをしてくれます。しかし、最終的に責任を取るのは自分です。自分で考え、答えを出し、その決断を正解にしていきましょう。

就活の前に、「働く」ことを本気で考える
その観点から見ると、「合わなければすぐに辞めればいい」という考え方は、やや安易です。確かに転職はしやすくなっていますが、それでも最初の会社で、一定期間は腰を据えて働くことをおすすめします。
理由は、中途採用が専門性の世界だからです。専門性がないまま市場に出ても、市場価値は高まりません。特に文系出身者はその傾向が強いでしょう。「1万時間の法則」と言われるように、1万時間を費やして初めて一人前と認められる分野も多くあります。5〜6年目を迎えた段階で、その会社に残るのか、転職するのかを前向きに考えればよいのです。
実際に働いてみないと分からない入社後のギャップは、どの会社にも必ずあります。福利厚生や社風、給与水準も大切ですが、最も重要なのは、自分が何に価値を感じるかです。仕事内容や事業に興味を持てない会社に入れば、苦労は目に見えています。
ワークライフバランスや転職を本格的に考えるタイミングは、30代半ば以降、家庭や親の問題などで、100%自分の時間を使えなくなったときかもしれません。AIの進化も進む中で、専門性のない人材は、より厳しい競争にさらされます。だからこそ、専門性を磨くための数年間をどう使うかを考えたとき、就職活動での企業との出会いが、いかに重要かが分かるはずです。

就職活動を楽しく、充実したものにする一番の方法は、「働くこと」にポジティブになることかもしれません。社会人になることに対して、「不安だ」「自由がなくなる」と感じる人も多いでしょう。しかし、20年以上学んできたことを生かせる場が、ようやく訪れるのです。いよいよ試合に出られるタイミングだと言えます。
これまでの「学ぶ側」から、「誰かに価値を提供する側」へ。
消費する側から、稼ぎ、社会を良くする側へ。
ワクワクしてきませんか。
さあ、あなたの出番です。
