就活が目的になっていませんか?経験は、本来その先につながるもの。「就活のためだけ」は、もったいない。

執筆者:クロスメディアHR総合研究所 所長 河本 英之

まず、「ガクチカで話す内容によって有利・不利が決まる」ということは、正直なところありません。資格取得やボランティアは、エピソードとして分かりやすいという側面はあるかもしれませんが、アルバイトでも、サークルでも、勉強でも、限られた時間の中で自分が熱中したものこそが「自分らしい話」になります。どのエピソードが上で、どれが下といった優劣は、まったくありません。

一番の問題は、「有利になる」という情報をもとに、あまり興味のない資格取得をしてしまうことです。「就活で受かるためには、どの資格を取ればよいですか?」と質問してくる学生も多いですが、その背景には、就活そのものを目的として捉えてしまっている意識があるのかもしれません。

就職はあくまでスタートラインであり、ゴールではありません。「就活に有利だから取る」という安易な発想はやめましょう。もちろん、自身のテーマに沿って資格を取得すること自体は問題ありません。なお、採用において資格の有無は、有利にも不利にもほとんど影響しません。

ガクチカにおいて大切なのは、「テーマを持つこと」です。舞台はアルバイトでも、サークルでも、留学先でも構いません。「学生生活の中で何をやりたいと思い、そのために何を考え、どのような努力をした結果、何を学んだのか」を語ることが重要です。それこそが、企業が求めている「あなたらしさ」です。

「定量的な結果が出ていないとガクチカにならない」という情報を耳にすることもありますが、そのようなことはありません。定量的な結果といえば、部活動で全国大会何位、アルバイトで売上が何パーセント向上した、といった例に限られがちです。企業側は実績の大小を求めているわけではありませんし、「すごい実績」と評価されるケースは、おそらく1万人に1人程度でしょう。むしろ、たとえ失敗であっても、そこまで没頭した結果、何を学んだのかという点のほうが、はるかに関心を持たれます。

「チームで取り組んだ経験のほうが、個人での取り組みより価値が高い」という話も口コミで見受けられますが、研究に没頭してきた理系学生の評価が低くなるでしょうか。決してそのようなことはありません。

新卒に期待されているのは、「ポテンシャル」。
同じ条件での優劣よりも、あなたらしさが見られています。

日本の高度経済成長期には、決められたことを効率よくこなすことで業績が向上していたため、素直で従順な人材が求められていました。しかし現在、日本は少子高齢化による人口減少局面に入っており、どの企業も現場でイノベーションを起こさなければ、存続すら危うい状況にあります。

企業側の視点に立つと、既存事業を推進するだけであれば、中途採用のほうが圧倒的に効率的です。しかし、10年後の会社を見据えたとき、世代交代や外部環境の不確実性を考慮すると、何を重視すべきかといえば新卒採用です。現在の事業を理解しつつ、企業を新しいステージへ引き上げ、イノベーションを起こしてくれる存在としてのポテンシャルが期待されています。だからこそ、学生時代の実績の大小ではなく、その人の「考え方」を企業は見ているのです。

例えば、同じ部活動で失敗を経験したとしても、Aさんは明るく仲間を励まし、Bさんは翌日から練習内容を見直したとします。この二つは、まったく異なる行動です。その違いから企業は、「社会に出たとき、失敗をどう捉える人なのか」「再び立て直していける人なのか」という点を見ています。現場において、自ら考え、学び、行動し、工夫しながら試行錯誤できる人材を求めている企業は非常に多いのです。

「イノベーション人材」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、最初から現場でその力を発揮できる人は、ほとんどいません。まずは、その一歩手前にある「主体性」を意識することが大切です。

企業が何を求めているのかという問いに対し、多くの学生は「コミュニケーション力」「リーダーシップ」「論理的思考力」などを挙げます。しかし、これらの能力は後天的に、ある程度まで育成することが可能です。それ以上に重要なのは、先天的という意味ではなく、20年余りの人生の中で培われてきた「ものの考え方」です。

その要素の一つが「主体性」です。「言われる前に動く」「付加価値を加えて提出する」といった姿勢がそれに当たります。例えば、「これを考えてやってみて」と言われたとき、受け身の姿勢では「教わっていません」「分かりません」と返してしまいがちですが、それではイノベーションにはつながりません。そのため、多くの企業が共通して「主体性」を重視していると感じます。

就活にも主体性を周囲や情報に惑わされず、「自分で考え、自分で決める」ことが大切です。

近年、就職活動の早期化が進んでいます。一般的には大学3年生の夏頃と言われていますが、すでに2年生、1年生から動き始める学生もいます。1、2年生のうちに「内定パス」を手にしている学生もいるようです。

しかし、この事例をもって「早く動いたほうがよい」と言いたいわけではありません。就活はいつ始めても構いませんし、周囲に合わせる必要もありません。自分の意思で早く動きたいのであれば動けばよいですし、勉強や部活動に集中したいのであれば、無理に動く必要はありません。主体性を持って就活に向き合ってほしいと考えています。

これからの日本において、従来通り「勉強ができること」だけが武器になるでしょうか。皆が同じ方向に進む時代は、終わりつつあります。多様な情報やツールを活用しながら、自分の頭で答えを導き出す力が求められています。それは就活においても同様です。

インターネット上には多くの情報が溢れています。それを見て不安になるのではなく、「なるほど、では自分はこう考える」と判断できるかどうかが重要です。AI時代だからこそ、自分で決める力が求められています。

大学選択の段階で意図を持って学部・学科を選んでいるのであれば、1、2年生のうちは無理に就活をする必要はないかもしれません。大学で何のために、何を学ぶのかが明確だからです。一方で、明確な理由なく進学した場合は、1年生のうちから世の中にどのような企業があるのかを知っておくことも有効でしょう。

特に文系の学生は、「よい学校に行けば選択肢が広がる」と言われて育ってきた方も多いのではないでしょうか。この考え方自体は間違いではありませんが、「選択肢を広げる」ことばかりに意識が向き、「選択肢を絞る」経験が不足していることが、就活を難しくしている要因の一つです。無数の選択肢の中で、突然「軸を持って選んでください」と言われても、それは簡単なことではありません。

だからこそ、「偏差値が高いから」という理由で大学を選んだ学生ほど、早い段階から「自分は何がしたかったのか」「何のためにこの勉強をしているのか」「自分が本来持っている力は何か」を自問自答してほしいと思います。勉強だけでなく、ビジネスの視点を持てる人材を目指しましょう。

自分で選択し、決断したからこそ生まれる納得感や満足感は、就職後のパフォーマンスにも大きな影響を与えます。「主体性」は現代のビジネスパーソンにとって欠かせない要素であり、就活においても同様です。ぜひ学生のうちから、「自分で考え、決める」姿勢を意識してほしいと思います。


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