”鉄は錆びる”宿命にある。
私たちの日常にある電気・ガス・水道などのインフラ施設や港湾・橋梁などの物流拠点も、自然界からの影響を受けて錆びていく。
これら社会基盤施設を腐食から守り、維持延命に貢献するのが防食技術である。
1951年創業の株式会社ナカボーテックは、電気防食を中心とした腐食防食専門のリーディングカンパニーとして、73年の歴史を築いてきた。防食事業を通じて、人々の安全安心な日常を守りつづけている。
同社は2023年4月、「ひたむきに防食技術を追求し、社会基盤の価値をまもり続けることにより、安全安心な日常を次代につなげます」というパーパスを策定した。
今回は同社の代表取締役社長である木村浩氏、そして同社で活躍するOさん、Nさん、Sさん、Fさんにお話を聞いた。
【木村社長インタビュー】
パーパスは会社が向かう方向性を指し示すもの
―― 今回、パーパスをつくられた背景にはどのようなことがあったのでしょうか。
我々の会社では、官公庁の仕事が多くあることから、国や地方自治体の予算措置によって業績が大きく影響を受けます。そのため、これまでは中期的な会社の計画というものを作ってきていませんでした。
しかし、業績の計画だけではなく、我々の意思としてどのような会社でありたいのか、そのために何を成していくべきなのかを明確にしたいとの思いから、中期経営計画の策定を昨年度から始めました。その第一歩として、我々の基軸になる考え方が必要となることから、当社のパーパスを作ることにしました。
パーパスを策定するに当たっては、当社のそれぞれの事業を代表する社員、経営企画や管理部門などの社員を集め、私を含めた10名ほどのチームを編成しました。
パーパスを作る際、最も大切にしたことは、我々の会社の「あるべき姿」を的確に表現するということです。誰が読んでも誤解がなく、我々の会社が何のために存在しているのかを表現できるように議論を重ねました。
―― 御社のパーパスには、どんな思いが込められているのでしょうか。
策定されたパーパスに記してあることをしっかりと腹落ちさせ、共感し、判断の基軸としていただければ、あとは社員の皆さんに型にはまらず伸び伸びと仕事をしていただきたいと思っています。パーパスは、我々の存在意義であり、向かうべき方向です。パーパスで縛ろうということではありません。
我々のパーパスは4月に策定されたばかりです。今後はパーパスを社員の皆さんに浸透させるためのアクションを進めていきます。社長の私が、北海道から沖縄まである全国の支店・営業所を回る機会が年に数回あるので、その機会に私自身がパーパスについて語り、社員の皆さんと議論していきたいと思っています。また、社内イントラネットやポスターなどを使って、様々なコミュニケーション活動を行い、パーパスの浸透を図っていきます。
社員の皆さんが「自分は何のために仕事をしているのか」を考えたとき、パーパスがあることで、その仕事の持つ社会貢献などの価値や本来の意義をしっかり認識することができるのではないでしょうか。
相手の立場に立って考えられる人が、より良い仕事をつくる
―― 人材を採用する際、木村社長が重視しているポイントというのはどういうところにありますか。
大切なことは、人柄と基礎学力だと思っています。
どんな仕事であっても自分一人でできるものではなく、お客様はもちろん、同僚や協力会社の皆さんなど、色々な人たちとコミュニケーションを取っていかなければなりません。相手の立場に立ってものを考えることができ、その上でどうするべきかを考えられることが重要です。
また、当社では学びの場として様々な研修を用意し、博士号を含めた種々の資格取得支援を積極的に行っています。基礎学力があれば、仕事に役立つ知識をしっかりと積み上げていくことができるでしょう。
―― 会社と社員の理想とする関係性について、どのようにお考えでしょうか。
私には、社員の皆さんに会社を好きになってほしいという想いがあります。そのためには会社も社員のことを好きにならなくてはなりません。お互いの関係性を良くするための仕組みや、研修などの機会を提供していくということが必要だと思います。
会社を好きになっていただきたい。その取り組みの一つが福利厚生です。当社には従来から自己啓発やレクリエーションの費用を補助する福利厚生制度があり、2023年4月より、この制度のメニューに奨学金を返済できるという旨を追加しました。若い方は奨学金を借りて学業に励んでいた方も多いという声を聞いて反映した制度で、活用されている社員も多いようです。
当社には、防食技術や自分の仕事が好きだという社員の方が多くいます。その皆さんに、仕事をますます好きになっていただくための施策を打っていくということもあります。そこで大切なことは、好きでやっている仕事を、会社で縛らないということです。
何かを提供するばかりではなく、社員の皆さんが存分に活躍できるフィールドを用意することが大切だと考えています。また、社員の皆さんが事業感を持つことができるように、色々な仕事を経験していただきたいと思っています。
防食技術がより一層社会に貢献できる時代に
―― 会社としてどのような未来を描いていらっしゃいますか。
我々は民間企業ですので、利益を上げることはもちろん重要です。その一方で、防食というのは社会に暮らす人々の安全安心な日常を守るという社会貢献の側面が強い事業です。
当社は港湾の仕事を中心に、ライフラインになっているガス管や水道管、あるいは発電所などのプラントを主な対象として事業を展開しています。これまでは、「新設する施設の寿命を長くする」、「既設の施設を延命して、大切に使う」という仕事が中心でした。国の政策を含め、今後は施設の維持延命がより重視され、我々の事業は堅調に推移していくものと考えています。
これらに加え、現在当社が意欲的に取り組んでいる事業の一つが、洋上風力発電施設の防食です。再生可能エネルギーを新たに作り出す仕事が始まりつつあり、より積極的にサステナビリティに貢献できることを楽しみにしています。
我々はこれからも、社会に打ち出されていく様々な技術や政策へのマーケティングを確実に実行し、その中で当社の技術が活かせるフィールドを発見し、応えていきます。今、社会に必要とされている再生可能エネルギーという領域においても、なくてはならない会社になっていきたいと考えています。
【社員インタビュー】
Oさん
2018年4月1日入社
技術統括部 技術部 技術一課
入社から一貫して技術統括部で設計を担当。
現在は日本全国の洋上風力発電所プロジェクトに従事。
採用サイトのプロジェクトストーリーにも出演している。
Nさん
2019年4月1日入社
技術統括部 技術部 技術二課
現在国際担当として、海外案件の設計や施工を進める。
また、DX推進チームとして会社全体のペーパーレス化に取り組み、電帳法に必要なツール導入支援を行う。
Sさん
2020年9月10日中途入社
東京支店 営業部 営業課
営業職として関東近郊(東京都、神奈川県、山梨県、長野県)を担当。
また、新規事業としてECサイト立ち上げチームに参加し、WEB販売促進も担当。
Fさん
2022年10月1日入社
経理部 経理チーム
固定資産関係や一部入金管理などの日常業務からリクルートサイトの制作まで、幅広い業務に携わる。また、改正電帳法及びインボイス制度への対応のため、新システムの導入・展開を担当。支店や営業所、お客様よりの問い合わせ窓口も兼ねる。
防食技術をより分かりやすく伝える。パーパスは企業の羅針盤のようなもの
―― 皆さんの入社年と、お仕事の業務内容を教えてください。
Oさん 私は2018年の4月に入社しました。現在は技術統括部の技術部に所属しております。洋上風力発電の新規プロジェクトに従事し、電気防食の設計や施工の他に運用と保守も担当しています。
Nさん 私は2019年の入社後4年間、名古屋支店にて港湾関係の防食工事の現場を担当していました。現在は本社の技術統括部へ異動となり、国際担当として主に海外案件を担当しています。2023年の10月は、1カ月ほどパプアニューギニアに滞在し、業務を遂行していました。
Sさん 私は2020年の9月に中途採用で入社しました。今年4年目になります。昨年までは本社の営業統括部で勤務し、現在は東京支店所属の営業を担当しています。官公庁やガス会社様、港湾構造物を作っている建設会社様へ当社の防食の営業を推進しています。
Fさん 私は経理部に所属しています。2022年の10月に入社しました。通常の経理業務に加え、インボイス制度など法改正の対応に伴う社内制度の改革及び新システムの検討や導入展開なども担当しています。最近ですと当社の採用サイトの制作に関わる業務にも関わり、幅広い業務を経験させていただいています。
―― 皆さんは、策定されたパーパスについて、どのような解釈をお持ちでしょうか。
Oさん 私たちの会社には「顧客のニーズを先取りして創造にチャレンジし、社会に貢献すると共に社業の発展を期する」経営理念があります。策定されたパーパスを読んで、正直なところ何が違うのかと、少しわかりにくさを覚えました。しかし、日々仕事をしてパーパスに触れる中で、徐々に会社の大きな方針を表しているのだと実感するようになったんです。ふとした時に振り返ることができる基軸のようなものだと思います。
Fさん 私の仕事にはExcelを使って表を作るなどの業務があり、中には「単純作業」だと思う仕事もあります。そのような仕事も、我々の会社のパーパスに直結しているんです。毎日忙しく仕事をしている中で、何のためにこの仕事をやっているのだろうと、改めて考えることもあります。そんなとき、パーパスは羅針盤のように自分が目指す場所を指し、常に照らしてくれる。会社の根底にある指針的な存在です。
Sさん パーパスは、仕事をする上での判断軸のようなものだと考えています。当社のパーパスには、「防食技術を追求する」という言葉があります。利益だけを求めていれば仕事も増えるのでしょうが、そうではなくて、防食技術を追求して技術を活かす仕事に注力していくことで、自分や企業の成長につながるより良い仕事ができると考えます。
Oさん 私は家族や周囲の方に、ナカボーテックはどんな会社なのかとよく聞かれるんです。端的に説明することが難しく、「港湾の施設にアルミ合金を設置する会社」と話してもなかなか上手に伝えることが出来ませんでした。会社を簡潔にわかりやすく表現しているパーパスができてからは、当社が何をしている会社なのかをより理解していただきやすくなったと思っています。
社員が自由に働くことが一番。ワークライフバランスや福利厚生の充実
―― 社内のワークライフバランスについて、どう感じていらっしゃいますか。
Oさん 仕事が特に忙しいときは、本気で集中して取り組まなければなりません。例えば以前、出張で自宅に一ヶ月帰れなかったことがありました。しかし、そこを乗り越えたあとの休暇は格別でしたね。当社にはきちんと「休みを取ります」と伝えることができる雰囲気があります。福利厚生の「ベネフィット・ステーション※」を自分のために使うなどをして心身のリフレッシュを図り、次の仕事に備えることができます。トータルで考えて、ワークとライフのバランスが取れるように心がけています。
Nさん 仕事をする中で、働こうと思えば幾らでも働くことができますが、当社の働き方改革を考えると、自分で主体的に仕事を打ち切ることが必要だと思っています。当社には、働くときは働き、休むときにはきちんと休むことができる環境が整備されています。
Sさん 仕事の忙しさがあるということを前提として、私たち営業には、早く帰ることができる人は仕事ができるという文化があります。だからこそ仕事の業務量が増えた時は、仕事のバランスをチーム全員で考えながら、効率化するようにしています。ワークライフバランスをお互いに意識できる環境だと思います。
Fさん 私が入社したばかりの頃、上長に言われた印象的な言葉があります。それは「我々は働くために生きているのではなく、生きるために働いているのだから、そこをしっかり分けないといけない」という言葉でした。仕事はあくまでも生活の中の1要素でしかない。その1要素のために根幹である自分の生活を削るようなことは本末転倒だという意味です。オンとオフを調整することが、メリハリのある生活をするための第一歩だと思っています。木村社長がおっしゃっていた「伸び伸びと仕事をしていただく」という考えがしっかり会社のカルチャーに浸透していると実感しています。
―― 普段から感じている、会社の魅力はどのようなものでしょうか。
Fさん 働く側としての一番の魅力は、福利厚生がとても充実しているということです。育児休業も手厚く、当社の育児休業は国の法定日数を大きく上回ります。男性社員、女性社員関わらず、社員の子供さんが小学6年生になるまで育児休業を取得できます。業種上女性の比率は少ない当社ですが、男女どちらともが働きやすい職場環境を追求していると思います。
Sさん 私が入社したばかりの頃、防食需要がある港湾施設などを営業した際に感じたのは、外部からの評判が圧倒的にいいこと、知名度が高い会社だということです。
当社の取引会社様は名だたる企業や官公庁が多いのですが、そういった方々も防食に関してはナカボーテックに任せておけば大丈夫、と仰ってくださいます。そういう声を聞くと嬉しい気持ちになり、皆さんにお応えできるように仕事をもっと頑張ろうという意欲につながります。
私が事業統括部の営業だったとき、Oさんが技術の担当でした。お客様から問い合わせをいただいた際、営業職である私は、詳細な技術質問に対して即時お答えすることができませんでした。そこでOさんに確認をして改めてご説明を差し上げると、良く理解できたとお客様から感謝されたんです。営業の後ろに技術という後ろ盾がいると、とても安心して仕事ができるということは大きいと思います。
Oさん 私たちはそこにナカボーテックの信頼の看板を背負っているんですよね。
私がいる技術の部署は、お客様の困りごとに対応することが多く、新しい情報をいただくことができる部署です。たくさんの知識と情報をインプットできる環境にあります。自分がどんどんレベルアップしていくイメージです。
蓄積した知識を、社内や対外的に提供して広げていく。周囲からありがとうと声を掛けていただける。そこにとてもやりがいを感じることができます。
その経験ができるのも、73年の歴史と、そこで培われてきた信用と信頼のお陰です。先輩方が信用と信頼を勝ち取ってきたからこそ、今があると思います。
Nさん 私の仕事は、北海道から沖縄まで全国に散在する、さまざまな工事現場が中心になります。新しくプラント施設などをつくるとなれば、1、2年の年数がかかることもあります。その仕事のたびにいろんな場所を訪れることができるんです。現場ごとに環境が違う中で生活するので、常にフレッシュな気持ちをもって働けるということが魅力だと思います。
転勤と言うとネガティブにとらえられがちですが、いろんな場所へ行くことができるので、その地域の人と交流を持てるということにも面白さを感じます。
それぞれの個性を活かし、尊重し合いながら仕事をする
―― たくさんの方々と関わりながらお仕事をされている中で、ご自身が大切にしていることはどんなことでしょうか。
Fさん 私は、相手に寄り添うということを大事にしています。経理の仕事であったり、社内の制度の新しいツールを入れたりする中で、全国の部店所やお客様から問い合わせがきます。例えばこれができない、という内容の問い合わせに対して、「なぜできないのか」と言ってしまえばそこで終わってしまいます。相手も人ですから、その人を尊重しなければ仕事が回っていかないと思います。
Sさん Fさんに、新規で取引をするお客様の取引口座を登録することがあります。本来ですと登録期限の1週間前にしなければならないのですが、その期限を過ぎてお客様から必要情報が送られてくる場合もあり、登録依頼が遅れてしまうこともあります。Fさんは、「何とかやってみます。営業さんは大変ですよね」という一言があるんです。切羽詰まったお客様の依頼も多いので、営業としては「大丈夫です」という言葉があると、働きやすいなと感じます。
Fさん それぞれの方に事情があると思うので、自分にできることを考えて、できる限りのサポートをしています。営業の方にそう思っていただけて、とても嬉しいです。
Sさん 技術の方もそうです。切羽詰まったとき、少し困りながらもなんとか助けてくれるんです。営業としては、より頑張らなくてはという気持ちになります。
Oさん 私は、自分の話したいことをまとめて、自分の中で整理してから説明することを心がけています。話したいことを明確にして、分かりやすく相手に伝える。お客様に対して、そして自分に対しての心がけでもあります。自分が理解できていなければ、相手にも理解されないという考えからです。しっかり仕事に活かすことができていると思います。
Nさん 施設の中には、地域の行政によって決められた、電気防食の設計についてのガイドラインがある施設があります。ガイドラインができたのはバブルの建設ラッシュより後なので、ガイドラインに沿っていない施設もあるんです。
私は、その施設がガイドラインに合っていないからといって無下に切り捨てるのではなく、一つ一つにちゃんと集中、対応して、設計を正しく行うことを大切にしています。
Sさん 私は話す相手によって微調整しながら、わかりやすい言葉で説明することを常に意識しています。仕事をする中で、設計会社様に営業をするときがあります。そんなときは専門的な言葉や、図面で伝えた方が伝わりやすい場合があります。
一方、現場の建設会社様や工事をする側に説明するとなると、設計の専門的な言葉では伝わらないときがあります。現場では、海に潜って調査をするためのダイバーの方や、職人の方とお仕事をするケースもあります。そこで工事などの設計図を使ってそのまま伝えても伝わらないかもしれないので、どう仕事を進めていくかということをかみ砕いて伝えています。
これから必要なのは、横のつながりをもった組織強化力
―― これからの皆さんの目標を教えていただけますでしょうか。
Sさん 私たち営業職は、支店の中での連携や繋がりは強くあると感じています。一方で、他の支店や営業所との横の繋がりが少ないと思っているんです。先日10年以内の若手営業職で営業研修を行いました。その中で、それぞれの担当の営業方法が違うということがわかり、ますます横のつながりは大事だと感じたので、対話する機会を増やしていきたいと思います。
Oさん 私は今、新規プロジェクトに取り組んでいます。非常に限られた人しか知らない技術なので、このプロジェクトで自分の専門性を高めて、必要な時に人に伝えることができるようになるまで、知識を身に着けていこうと考えています。
その技術の知識を、説明会や勉強会で発表して、社内外に広く知っていただくということが目標です。
Nさん 我々技術の担当が一番大事にすべきことは信頼です。お客様からの急ぎの相談をいただくことがあります。そこで私一人で対応してしまうと、あとあと困ることも出てくることもあるかもしれません。必ず誰かに相談できる雰囲気を社内につくっていきたいと思います。
また、誰もがわかるような形で、Oさんの仰っていたところに通じるわけですが、みんなで勉強会を開き、一定のレベル以上の設計ができるような形に持っていくことが理想なのではと思っています。
Fさん 社内制度システムを入れる際、各支店をまわり、ヒアリングを行いました。支店ごとのルールなどもあり、異動してきた方は慣れるまで大変とのことでした。こういった各社員の困りごとの解決や業務の効率化などにより、 直接部門の方がもっと働きやすくなるような環境を作っていきたいです。能動的によりよく変えていき、できる限り皆さんのサポートをしていきたいと思います。
※ベネフィット・ステーション…社員が生活・レジャーなどに使用した費用を補助する制度。旅行、映画、フィットネス、マッサージ、ゴルフなどさまざまな分野で使用できる。また、2023年4月より奨学金の返済に充てること可能となった。1人当たり年間12万円まで利用できる。