二川工業製作所|次世代を見据えた新たなビジネスで脱炭素社会の創造を先導

左から、茨木さん、デルゲルツェツェグさん、前田さん

創業以来SDGsに寄与する老舗ものづくり企業

私たち二川工業製作所は創業78年を迎えた老舗企業です。当社のメイン事業である製造業では、油圧ショベルをはじめとする建設機材の部品や、産業用ロボットの部品製造などを行っています。現在は世界の名だたる建機メーカーとタッグを組み、グローバル規模で事業を展開しています。国内には7つの工場のほか、中国にも工場を構えています。

当社のものづくりの強みは、圧倒的な技術力と徹底した品質管理体制にあります。すべての製品で妥協を許さない品質管理体制は、「使い捨て」で終わらない長寿命・高品質な製品を生み出しています。こうした環境負荷低減につながる製品づくりに加え、資源の有効活用を促進するなど、信頼と責任あるものづくりを行うことで、SDGsが掲げる17の目標にも寄与しています。

メーカーから「循環社会実現企業」へ

世界規模での事業を続けるには、まずは当社が持続可能な企業であり続けなければなりません。そのためには新たな挑戦が重要になり、近年は製造業を中心に「ものづくり」の枠を超えた事業展開も進めています。

まず目をつけたのは、温室効果ガスを排出しないエネルギーとして注目を集めていた「太陽光発電事業」でした。長期で安定的な収益を見込める再生可能エネルギーは、新たな事業基盤になるのではないかと考え、2013年から着手しています。

その中でも特に注力しているのが、太陽光パネルをため池に浮かべる「ため池ソーラー」です。これは地上に設置するのと比較して、森林伐採をともなう大規模な開発が不要で、環境負荷が少ないという特徴があります。さらに、池の水面にパネルを設置することで、水の蒸発防止などを及ぼす藻類の繁殖軽減が促され、水質改善効果が期待できます。

太陽光パネルをフロート架台に取り付け、ため池に浮かべる水上太陽光発電事業

この事業を行うにあたっては、ため池を管理する地方自治体に賃料を払って、ため池の水面を借りています。この賃料収入を財源として、地方自治体は池の補修工事や環境整備に活用することができます。ため池ソーラー事業を通して、「発電事業」と「賃料収入」という付加価値を生み出し、循環型社会の形成の一助となることができました。

二川工業製作所が保有する発電所

太陽光発電で地域活性化にも貢献

2018年にはさらなる事業創出を目的に、株式会社フタガワというグループ会社を設立しました。フタガワではホテルやリユースなど、幅広い事業分野へと展開を展開しています。

ホテル事業では、北海道の小樽でコンテナを用いたホテルを建設しました。このホテルは大和ハウス工業と協業し、CO2排出量ゼロの電気を使用しています。コンテナの遮音性を生かした快適な場づくりと、シンプルな外観・内装を両立させた「環境にも、おサイフにも、やさしいホテル。」として、環境にもやさしいホテルブランドの確立を目指しています。

北海道小樽市で開業した北海道初のコンテナ式ホテル
Cozy Inn OTARU(コージーイン小樽)では、CO2排出量ゼロの電気を使用

このホテルでは、食事提供を行わない代わりに、ホテル周辺の飲食店と提携し特典クーポンを発行することで、地域への経済循環も重視しています。これはSDGsが掲げる「住み続けられるまちづくりを」にも寄与することを意識しました。

ほかにも、地域産業の持続可能な継続を目指す畜産事業など、次世代を見据えたビジネスの開拓にも積極的に取り組んでいます。すべての「人」の暮らしを支え、社会貢献の一翼を担う企業として、当社は進み続けていきます。

再エネ100%でカーボンニュートラルを推進

当社は2019年にCSRを環境問題に設定しました。自然災害や台風によって製造サプライヤー企業の生産ラインが操業停止に追い込まれるなど、当社の中で「地球環境問題をこれ以上深刻化させてはならない」という危機感が高まったのが背景にあります。

さらに、2020年1月には中小企業版RE100と呼ばれる「再エネ100宣言RE Action」に参加しました。これは企業・自治体・教育機関・医療機関などに、再生可能エネルギー(再エネ)100%利用を促進する新たな枠組みです。

この活動の参加要件には、「2050年までに使用電力を100%再エネに転換する目標を設定し、対外的に公表する」ことです。この取り組みの中で、当社はまず小樽市のコンテナホテルの使用電力を100%再エネでまかなうことから始めました。

2020年12月にはクリーン電力の小売事業などを行うアスエネ株式会社と協業し、国内工場の年間使用電力の約6GWh、金額換算で1億円分の電気をため池ソーラーから供給することで、100%再生可能エネルギーへ転換しました。夜間の使用電力など、カバーできない部分を環境価値が付与された100%再エネ由来の電力でまかなうことで、約2900トンのCO2削減も実現しました。これは「再エネ100宣言RE Action」参加企業のなかで、最大クラスの電力量になります。


国内全拠点での使用電力を100%再エネでまかなう目標を達成した

最近ではパートナー企業にも、自然エネルギーの電力利用を働きかけています。2021年には、製造パートナー企業2社のオフィスや工場に対して、当社で発電した電力の提供を開始しています。当社は2030年までにサプライチェーン全体で「再エネ100%のクリーンエネルギーでのものづくり」を目標とし、これらの取り組みはその大きな1歩となりました。

現在はAppleやGoogle、ソニーといった企業もサプライチェーン全体でカーボンニュートラルに注目しはじめています。近い将来、この潮流は業種問わずさまざまな業界への派生が予想され、今後は環境課題の解決に貢献できない企業は生き残れなくなると考えています。

このような世界情勢の中で、中小企業である当社が先行して取り組むことに意味があると思っています。

これらの取り組みは対外的にも評価され、2021年11月にグリーン購入(環境に配慮した製品やサービスを優先的に購入すること)の普及、拡大を目的に表彰している、「第22回グリーン購入大賞」の優秀10社に選定されました。今後は、2050年までに事業全体でカーボンニュートラルの達成を目指しています。
当社は、2050年までに事業全体でカーボンニュートラルの達成を目指し、さらに取り組みを強化していきます。

社員の「やってみたい」を大切に

製造業からスタートした当社が、次々と新しい事業に挑戦できているのは、多種・多様な人材が集まるダイバーシティ企業を掲げているからです。

不正や差別のない職場環境はもちろんのこと、性別や国籍、障がいを問わず、さまざまな経歴やバックボーンを持つ社員が強みを発揮しながら活躍できる環境が社員の働きがいにもつながっています。

例えばある工場長の方は、元は保育士といった経歴の持ち主です。また、高度海外人材としてモンゴル人8名を採用し、グローバルな職場環境で社員がお互いによい刺激を受けながら切磋琢磨しています。

当社では「企業は常に進化し続けなければ持続可能でない」という考えを大切にしています。そのため、新入社員であっても積極的に「やってみたい」と手を挙げ、それを受け入れる風土が根づいているわけです。

また、当社には一人ひとりがリーダーの素養を育む土壌があります。78年の歴史ある企業が製造業以外の事業に積極的に取り組めているのは、若手社員が自分のやりたいことに挑戦できる環境が大きく影響しています。

私たちはまだまだチャレンジの途中です。ここからさらに強く大きな組織に成長していくには、それぞれの多様性を尊重しながら、当社が大切にする思いや企業理念へ共感できる仲間を増やすことが欠かせません。新しい発想や方法で情報を拡散できるデジタルネイティブのみなさんの力を借りて発信していくことも、今後強化していきたいことの一つです。

SDGsの取り組みは、今後より必要不可欠になります。ただ、何か特別なことを行うのではなく、今後も事業を継続していくことが結果的にSDGsにつながると思っています。「お客様とともに、時代のその先へ」をモットーに、社員一丸となってさらなる発展を目指していきます。

二川工業製作所はこんな会社!

SDGsを管轄している推進室の3名にお話をうかがいました

前田さん

CO2排出の見える化

フタガワグループではCO2排出量を可視化できる「アスゼロ」というクラウドサービスを導入しています。これは、会社全体でどのくらいCO2を排出しているかが可視化できるものです。当社で製造している製品一台から排出量もわかるので、環境意識を高めるきっかけにもつながります。

 


茨木さん

自ら考えて行動できる人材

自分で考えて行動できる、明るくエネルギッシュな人にはぴったりの職場だと思います。現代は、最新情報や知識はネットで何でも手に入る時代です。膨大なネットの情報をうまく活用しながら、自分の頭で考え、新たな発想を生み出し、行動できるような人を待っています。

 


デルゲルツェツェグさん

SDGs新聞プロジェクト

フタガワグループでは2021年8月から推進メンバーによるプロジェクトを開始しました。まずは、フタガワグループ独自の「SDGs新聞」を2か月に一度、社内で発行しています。「自分ごと」化できるよう身近な取り組みも掲載し、全社員一丸となってSDGsと向き合っています。

 

こんな会社で働きたい SDGs編2』より転載。

 

株式会社二川工業製作所
取材日:2021年9月10日
代表取締役:二川 昌也
設立:1943年4月18日
業務内容:製造事業、再エネ・環境事業、ホテル事業、リユース事業、畜産事業、人材派遣事業

 

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