就活は学生と企業が互いのイメージを形成する最も重要な機会。企業も真剣だからこそ、学生も誠実に向き合うことが大切です。

内定を辞退してもその企業との関係は続く

日本の人口が減少傾向にあることは、学生の皆さんもご存じのとおりです。AIの活用により業務の効率化が進んでいるとはいえ、売り手市場の状況に大きな変化はありません。そのため日本人を採用すること自体の価値が高まりつつあります。

さらに、就職活動の多様化も進んでいます。かつてのように、皆が一斉に大手人気企業を目指す流れは、すでに崩れつつあります。ダイレクトリクルーティングのように、企業から直接オファーが届くサービスも普及し、学生は受け身でも情報を得られるようになりました。その結果、行動量が減少し、インターンシップの段階で志望先を絞り込み、その後に選択肢を広げない傾向も見られます。

いわゆる大手人気企業であっても、母集団形成に苦労しています。就活サイトへのPR費用を増やせば学生が集まる、という時代は終わりました。こうした状況の中で、中長期的な視点から「人材プール」という考え方が生まれ、新卒採用の現場にも広がっています。

ここでいう「人材」とは、自社に関心を持つ人のことです。その数が増えることは、将来的に入社してくれる可能性のある人材が増えることを意味します。主なアプローチは以下の通りです。

●リファラル採用

かつては縁故などとも言われましたが、その表現や範囲は広がり、既存社員の知り合いを紹介してもらう方法です。既存社員とのコミュニケーションを通し、働き方やカルチャーについてある程度理解をした状態で入社してもらえるメリットがあります。

●アルムナイ採用

わかりやすくいうと、一度在籍した社員を再雇用すること。ネガティブな要因ではなく、ステップアップや新たなチャレンジなどを目的に辞める人が増加したこともあり、「出戻り」は多くの企業で歓迎されています。

●辞退者ストック

内定辞退をした学生へ継続的に情報提供を行い、将来的な転職候補として関係を維持する取り組みです。実際にそうなった場合には、最終選考から始めることも多く、「ファストパス」とも言われています。

一度、社員や元社員、内定者などがファンとして関係を持ち続ければ、その評価は周囲にも広がります。これほど有効な採用ブランディングはありません。また、入社後のギャップが少なく、離職率の低下にもつながります。

就活は学生と企業の最初の縁

しかし、企業が学生との接点を持つこと自体が容易ではありません。学生の行動量は減少しており、インターンシップのタイミングを考えると、大学3年生の夏までに認知されていなければ、選択肢に入ることすら難しいのが現状です。

そのため、大学1・2年生向けにブランディングを行う企業も増えています。さらに、イベント協賛や出張授業などを通じて、中高生にまでアプローチする動きも広がっています。

最近、BtoB企業のCMをよく見かけませんか。製品ではなく、企業の想いやメッセージを伝える内容が増えているのが特徴です。BtoB企業は一般消費者との接点が少なく、認知の機会が限られているため、採用の観点からも情報発信の重要性が高まっています。

人が企業を意識的に見る機会は多くありません。主に「就職活動」「転職活動」「投資(株式購入)」のタイミングです。後ろの2つはしない人もいますので、この中でも、最も多くの人にとって重要なのが就職活動です。

このタイミングでの企業の対応は、その後の印象を大きく左右します。理不尽な圧迫面接を受けたら、その学生は名前も聞きたくないほどアンチになってしまうでしょう。たとえ最終選考に進まなかったとしても、採用担当者が誠実であれば、その企業に対する印象は良いものとして残ります。

新卒採用は、企業にとって「最初のファンづくりの機会」とも言えます。将来的に再応募してくれる可能性もありますし、顧客として関係が続くこともあります。未来を見据えれば、関心を持ってくれた学生をアンチにするより、ファンになってもらう方が、圧倒的にメリットが大きいわけです。

内定の正しい断り方とその理由

「人材プール」という考え方の広がりもあり、近年は学生へのフォローがより丁寧になっています。

選考の途中から個別担当者が付き、伴走する企業も増えています。「なぜ通過したのか」をフィードバックすることで、学生の納得感や志望度を高める狙いがあります。

一方で、不合格の理由をすべて開示する企業は多くありません。トラブルのリスクや対応コストの問題もあり、現実的には難しいためです。担当者に聞くこと自体は問題ありませんが、答えてくれなかったといって、不満を抱くのではなく、制度上の制約として理解しておく必要があります。

複数の企業から内定を得た場合、最終的に選択するのは学生の権利です。ただし、辞退する際には誠実な対応が求められます。あなたに内定を出すまでに、採用担当者はいろいろと動いてくれています。実際にアドバイスやエールを受けることもあるでしょう。これまでのサポートに対して、きちんと感謝を伝えましょう。可能であれば電話で、難しければ丁寧なメールで、感謝とともに意思を伝えましょう。

また、辞退理由を伝えることも有益です。企業にとっては、選ばれなかった理由こそが貴重な改善材料となります。

一方で、一度承諾した内定を辞退することは、私個人としては避けてほしいと考えています。内定承諾は、企業との重要な約束です。相手の立場を踏まえた判断が求められます。

就活は、学生と企業が関係を築く最初の機会です。たとえ入社に至らなくても、その関係を良好に保つことが、将来の可能性につながります。一度は目指した企業ですから、いろいろな経験を経て、将来、入社するかもしれないのですから。


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