
写真左:専務取締役 中川 昭さん(国際事業管掌)
写真右:取締役 青木 寛さん(臨床開発、開発薬事担当)
アメリカの現地法人立ち上げは約30年前。海外進出へ向け奮闘した記憶は現在の社員にも引き継がれています。帝國製薬のグローバル化の歩みと今後の戦略について、キーマンのおふたりに話を伺いました。
語り継がれる先人たちの挑戦
中川 29年前に米国現地法人立ち上げの際は、日本から役員がひとりで渡米し、現地在住の日本人1名を採用して2名で奮闘したと聞いています。医療用リドカイン貼付剤『Lidoderm®』(ライドダーム)をアメリカで開発しました。
青木 臨床試験では、プラセボ製剤(有効成分を含まない対照製剤)に対する有効性を示すことが難しく苦労したそうです。しかし、FDA(米国食品医薬品局)からのアドバイスをもとに試験方法を工夫し、最終的には数十例の臨床試験で良好な結果が得られ、承認をもらえました。一般的に痛みを指標とした試験は評価が難しく、通常は千人規模で行う場合が多いので、この時は特別だったといえます。
中川 帝國製薬の貼付剤製造技術は世界に誇れます。まず、製品の開発に注力したことが功を奏しました。「ライドダーム」はピーク時にはアメリカで年間1,500億円以上売り上げました。
青木 通常は特許期間が切れると安価な後発品が出てきて、先発医薬品の市場はほぼなくなります。しかし、当社の貼付剤は簡単に真似できない。だから当社のリドカイン貼付剤はいまもアメリカ市場の60%以上を占めています。
ただ、その一製品だけに頼っていてはいけません。現在、ヨーロッパで新製品の開発を進めており、近い将来、アメリカで承認を得て販売しようと考えています。
加速する“パートナービジネス”
中川 グローバル展開では、現地の販売提携企業と協働する“パートナービジネス”が重要です。海外のパートナー企業と行き来し、互いをよく知る必要があります。たとえば、欧米の提携先に香川本社に来ていただくこともあります。その際には仕事の交流だけでなく、京都など各地で食事や景色を楽しんで、日本文化を知っていただく。当社のゲストハウスも評判がいいですね。
同時に、私たちも相手国を訪問し相手のビジネスや文化を知ることも大切です。米国の提携先は毎年年始に営業スタッフ約1,000人をラスベガスのホテルに集め、一致団結するために年間方針を全員で確認していました。私たちも日本からこの会議に参加して日米でOne Teamとなりました。こうした取り組みもアメリカでの成功につながっているのかもしれません。
青木 海外の方に「阿吽の呼吸」とか「以心伝心」を期待してはいけません。少しの不安や違和感でも放置すると失敗につながります。伝えたいことは明確に、あるいは繰り返し言って確実に伝えることが大切です。上手な外国語でなくても構いません。
“ものづくり“へのこだわり
青木 2020年にグローバルニッチ企業100に選出されました。ニッチな貼付剤の技術をさまざまな疾患に応用し、世界へ展開してきたことが認められた結果ですね。
中川 当社の誇りは製品品質の高さです。提携先の各国の審査当局の基準をすべてクリアしてきました。生産、品質管理・品質保証部門の努力のたまものです。
青木 帝國製薬の社員は、職人的なまじめさがありますよね。全員がものづくりへのこだわりを持っていると感じます。 中川 製造部門以外の新入社員も、入社後1カ月間工場で製造プロセスを学びます。ものづくりの大切さを知ったうえでさまざまな職種に就く。それが高い品質で世界へ挑戦する土台になっていると思います。
世界の医療に貢献するために
中川 グローバルに活躍できる人材も増えてきました。さらに増やしていきたいです。
青木 そのためにも、社内制度を整える必要があります。ジョブローテーションなど、視野が広がるような仕組みをつくりたいと考えています。
中川 昨今は“インターナショナル(国際的)”というよりも“グローバル”と言うことが多くなってきました。“グローブ”は「地球」。人種は違っても同じ人類です。そして治療は地球上の全人類に共通するものです。
青木 日本の技術を海外に展開すれば、その国の人々に喜んでもらえる。海外との提携で国内に新しい技術や製品をもたらせば、国内の治療の選択肢も増える。グローバル化によって、世界の医療に貢献することが私たちの目指すところです。 中川 次の世代に引き継ぎつつ、チャンスを逃さず取り組んでいきたいですね。
帝國製薬の海外進出年表
1997年
米国現地法人 Teikoku Pharma USA, Inc.(TPU)を設立
1999年
世界初の医療用リドカイン貼付剤『Lidoderm®』を 米国で承認取得
2001年
ドイツGrünenthal GmbH社とライセンス契約を締結
2002年
スイスInstitut Biochimique SA社とライセンス契約を締結
スイス向けに『Neurodol®』が販売開始
2007年
欧州・南米で『Versatis®』の販売開始(現在50か国以上で販売)
2013年
オーソライズドジェネリック『Lidoderm AG』米国で販売開始
2024年
中国で『Lidoderm®』が承認
リドカイン5%パップ剤の世界累積販売枚数が40億枚を突破
2025年
TPU100%子会社 Teikoku Ventures, Inc.(TVI)を設立
帝國製薬ってこんな会社!
1848年創業で170年以上の歴史を持つ帝國製薬は、香川県東かがわ市の三本松に本社を構え、長年にわたって日本の医薬品産業を支えてきました。同社の強みは、有効成分を皮膚から吸収させる「経皮吸収技術」。この技術を使った貼付剤の開発は55年以上にわたり積み重ねてきたもので、現在も進化を続けています。貼付剤の技術を世界で試そうと、約30年前にアメリカに現地法人を設立し、現地での承認・販売に挑戦。以来、世界50カ国以上で販売され、世界中の医療に貢献しています。
挑戦と成長を支えるのは、ものづくりを大切にする社員たち。長い歴史の中で培われた技術と価値観は、次の世代へと受け継がれていきます。たゆまぬ努力で高い品質を守りながら、新たな製品開発に挑み続ける帝國製薬とそこで働く人を紹介します。
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