カンロ|「Sweeten the Future」老舗企業のサステナブルビジョン

左から村田さん、石川さん

大正元年創業のカンロを支える2つの力

大正元年(1912年)創業の当社には、社名にもなっているロングセラー商品があります。1955年から発売している「カンロ飴」です。商品名の由来は、天から降る甘い露を意味する「甘露」で、この世に存在する美味の代名詞が語源になっています。

当時の日本は輸入品のフルーツキャンディが多く、しょうゆを隠し味にしたカンロ飴は多くの人に好まれました。発売当初は裸飴のまま量り売りされていましたが、セロハン紙で1粒ずつ包装してからは、個別包装された初のキャンディという珍しさから、より一層人気が高まりました。そして発売から5年後の1960年、社名を宮本製菓から現在のカンロに改称しました。

私たちは今年で110年周年を迎えます。これまで事業を続けられたのは、世代を越えて多くのお客様に商品を手に取っていただけたことが第一ですが、社内にも、大きな理由が2つあります。

1つは、社員の力です。当社には、キャンディが好き、お菓子が好き、そして何より、人を笑顔にするのが好き、ワクワクするような楽しいものを提供するのが好きな社員がたくさんいます。この「好き」の気持ちが挑戦を後押しし、カンロの伝統を守りながら進み続けてきました。

もう1つは、変わり続ける世の中、社会のニーズへの対応力です。当社はこれまで、世の中の変化、需要に合わせて商品開発や生産体制を見直し、安全・安心のために衛生管理を強化してきました。

昨今の健康ブームの一環として生まれた糖質制限は、私たちの事業を支える「糖」を悪者にしがちです。通常であればこれは逆風ですが、私たちは「今こそ、糖の価値を伝えるチャンスだ」と捉え、社員一丸となってこの変化に対応しています。 例えば、オウンドメディアを活用して、糖は人間の生活にとって欠かせない大切なものであることを伝えたり、マラソンやサッカーなどのスポーツイベントでキャンディを配ったりするなど接客的な取り組みをしています。

カンロ創業時の工場の様子

マテリアリティを特定してKPIを設定

SDGsについても、私たちは社員一人ひとりが課題を主体的に捉え、時代の変化に柔軟に対応しながら取り組んできました。

当社のサステナブルへの活動はSDGsが国連サミットで採択される以前からありましたが、あくまで社会貢献を考える活動でした。しかし、SDGsを意識してからは、財務分野に影響がある非財務活動、経営戦略の一部として考えるようになりました。

活動を本格化したのは、SDGsの言葉が認知されはじめた2018年頃からです。最初に行ったのは、キャンディメーカーとしてのマテリアリティ(重要課題)の特定でした。

各種ガイドラインや役員・社外の有識者へのインタビューなどをもとに、「糖の価値創造」「事業を通じた環境負荷削減」「食の安全、安心」「人権の尊重・ダイバーシティの推進」「組織統治」の5つの領域と、その中に12個のマテリアリティを特定し、定量で評価できる項目にはKPIを設定していきました。

2018年度にマテリアリティを特定した際に使用したマッピング図

当社のマテリアリティの中で、社会にとって特に重要度の高い課題は「気候変動問題」です。工場や商品を運ぶ物流のトラックなどからは、常に温室効果ガスを排出しています。全社員が意識づけできるように、当社では2030年までの目標として、CO2排出量を2019年と比べて30%削減(売上原単位)すると設定しています。

近年クローズアップされているフードロス問題も、当社が取り組む社会課題の1つです。キャンディの製造過程では、規格外で販売できない飴や原材料などが発生し、廃棄物として処理されます。そんなフードロスを減らすために、2030年までに食品廃棄物をこちらも2019年比で30%削減(売上高原単位)することを目標に掲げています。

ダイバーシティ推進においては、2030年までに女性管理職(課長職以上)比率を30%以上に、2024年までに障がい者雇用比率を3%以上に引き上げようとしています。これらの体制を整えるため、2018年にダイバーシティ推進室を設置しました。ほかにも、男女の育児休業取得の促進や、LGBTに関わる基本方針の設定なども行ってきました。

成長の加速を目指した羅針盤「Kanro Vision 2030」

2021年2月には経営羅針盤である「Kanro Vision 2030」を策定、発表しました。2030年の会社の将来像を描き、価値創造、ESG経営、そして事業領域の拡大を3つの重点戦略としています。

1つ目の価値創造とは、創業110年の歴史と伝統で培われた「素材を活かす」と「キャンディならではの機能性」を追求し、人々の健やかな生活への貢献を目指した新たな価値の創造を戦略的に考えています。

2つ目のESG経営は、環境、社会、ガバナンスを意識した経営を進める姿勢を表しています。事業を通じて社会課題の解決に取り組み、社会と共生する企業を目指していきます。

そして、3つ目の事業領域の拡大では、国内のキャンディ事業を軸に、グローバル・デジタル・フューチャーの市場を視野に入れた多角的な事業展開を目指していきます。

この動きを加速するためにも、2022年1月にフューチャーデザイン事業本部を設置しました。ウェルビーイングや、サステナブルな未来に貢献するために、既存の枠に捉われない商品やサービス、事業をデザインしていきます。

例えば、フードロスの原因だった規格外の飴について、従来は処分を外部業者へ委託していましたが、今後はスタートアップ企業とタッグを組んで飴からエタノールを精製し、日用雑貨などを作成するプロジェクトを計画しています。

ほかにも、障がいのある方やシニア人材の雇用の場である「カンロファーム」で栽培しているハーブを飴やアロマ、紅茶などに製品化できれば、社員のやりがいにもつながると考えています。

Kanro Vision 2030では、売上高500億円、営業利益率9%以上(新収益認識基準による売上高・営業利益率・ROIC再計算)などの財務目標も具体的に設定し、非財務と財務の両輪でコロナ禍で足踏みした成長を再び加速できるようギアを上げていきます。

カンロファームで栽培しているハーブ

サステナブル経営の深耕へ

当社は2018年に、本社オフィスを現在の新宿に移転しました。かつては7つのフロアがありましたが、移転によって1フロアに変更し、風通しもよくなりました。また、座席をフリーアドレスにして、服装も自由にしました。

国内の各支店、各工場、研究所、カンロファームともオンラインでつながり、遠隔地の社員ともコミュニケーションが活発化させています。社内で使用しているSNSやオンラインミーティング、年に5〜6回ほど行っている大規模な全社ミーティングなどを通じて会社の考えを社員に向けて発信してきました。会社全体でもSDGsへの意識が高まっているように感じます。

サステナブル経営を推進する「施策検討PT」は、若手社員を中心に2020年1月に発足しました。このプロジェクトでは、2050年に私たちがありたい姿、あるべき姿からバックキャスティングで考え、将来直面する社会的課題を洗い出しました。その解決のために今必要なことを議論し、最終的には経営会議で提案も行いました。

その中でKanro Vision 2030にも採用されたのが、ティール型への組織変革です。これは従来のトップダウン方式ではなく、社員それぞれが自分で考えながら目標に向かっていける組織を目指したものです。サステナブルへの意識が高い若手社員たちを中心に、すでに具体的な動きへとつながっています。

私たちは、「Sweeten the Future心がひとつぶ、大きくなる」をパーパスに掲げています。このパーパスを実現していくために必要なのは、私たちと同じ目標に向かっていける新しい仲間です。

私たちが求める人材は、世の中で起こっていることに敏感な人です。それは時代の変化に流されるということではなく、自分の考えを持ち、周囲の意見にも耳を傾けながら自分で行動できる人をさします。

就活生の特権は、いろいろな会社・業界から話を聞けることだと思います。たとえその会社に入社しなくても、話を聞くことで視野が広がり、その後の人生にもプラスになるでしょう。「キャンディメーカーの話を一度聞いてみようかな」という方に、ぜひ一度、私たちのオフィシャルサイトを覗いてみてもらいたいと思います。

カンロはこんな会社!

若手社員12人で結成された「施策検討PT」の 3人のメンバーがカンロを語ります!

生産本部・松本工場 岡田さん

松本工場では、製造廃棄や流通廃棄などで大量の廃棄が発生していて、その光景を日々工場で目の当たりにして危機感を持っていました。ただカンロには、地方からでも、20代の若者でも、経営陣に意見を言える環境があります。フードロスの現状に不安を感じた私は、松本あめ市に規格外の飴を無償提供する提案をしました。

人事・総務本部・総務部 井上さん

私はホッケーを続けながらカンロで働いています。仕事内容や就業時間は他の社員の方と同じですが、フレックス制度があることで時間の融通が利くので働きやすい環境です。当時は入社直後の私がいきなりこのチームに参画することになり驚きました。

経営企画本部・経営企画部係長 石川さん

経営陣へ「若手もこんなに考えているんだぞ!」と示せたと思います。こうした事例を重ねて、若手がもっと経営に参画できる会社にしていきたいです。今までのカンロにいないタイプの人にも入社してもらいたいので、私たちと一緒に会社を変革していける人を待っています。

こんな会社で働きたい SDGs編2』より転載。

 

カンロ株式会社
取材日:2021年11月30日
代表取締役社長:三須和泰
創業:1912年11月10日
設立:1950年5月6日
事業内容:菓子、食品の製造および販売

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