2023.06.28

コクヨ株式会社 - ダイバーシティオフィス「HOWS PARK」本格始動へ。D&I実現へ大きな一歩 ~2024年度インクルーシブデザイン商品比率約20%以上を目指す~

コクヨ株式会社(本社 大阪市 社長 黒田英邦)は、1905年の創業以来から掲げていた、「商品を通じて世の中の役に立つ」という企業理念を刷新し、「be Unique.」を打ち出した。同社の商品・サービスを通じて得られる“体験”という価値を通じて、創造性を刺激し、個性を輝かせる、という想いが込められている。

様々なステークホルダーとの関係こそ同社が未来に対して描いている姿であり、実現していくべき役割だ。その一つとして、2023年1月より大阪本社1階にて試験稼働していたダイバーシティオフィス「HOWS PARK(ハウズ パーク)」を、2023年6月1日より本格稼働した。

今回、同社CSV本部サステナビリティ推進室理事である井田幸男さんに、同施設に関しての取り組みを聞いた。

―今回の「HOWS PARK」には、どういったコンセプトがあるのでしょうか。

「HOWS PARK」を通じて、障碍のある人もない人も、お互いを尊重し共感を生みだすこと。それによって多様な個性をもつ社員が刺激し合い、成長することを実践し、インクルーシブなモノ・コトの創造プロセスを創出していくことがコンセプトになっています。

さらにこれを知見として、私たちのインクルーシブデザイン、ダイバーシティオフィス設計技術を広く提案・提供し、社会課題の解決に貢献していくことを目指しています。

―その姿を目指すための、御社グループ全体の目標はどんなところにありますか?

目標という観点では2つあります。長期ビジョンを「CCC2030」において“WORK&LIFESTYLE Company”を2年前から制定、発表しています。

財務目標として掲げているのは2030年において5千億の売り上げを目指していきます。一方、私は、非財務目標として掲げているさまざまなチャレンジ目標を達成するために今取り組んでいるところです。

パーパスを実現するため、私たちのマテリアリティが存在しています。そのマテリアリティの中には、社内社外のウェルビーイングを向上するということが重点課題として掲げられており、その手法としてのインクルーシブデザイン、つまり「HOWS PARK」の計画があります。インクルーシブデザインを経た新シリーズでの上市率を、2030年まで50%以上とすることを目指しています。

―ダイバーシティオフィス「HOWS PARK」を2023年1月から試験稼働されてきた中で、どんな狙いがあるのですか?

狙いは大きく三つあります。

当社には障害者の特例子会社のKハートという会社があります。同施設はその一部部門の本社内移転に伴い、将来的に両社の強みを生かして業務推進を進め、新たな価値創造を実現する場所を目指したものです。

2021年11月よりプロジェクト体制を組み、コクヨとコクヨKハートの社員が連携して計画を推進してきました。コクヨKハートの既存オフィス見学、社員ヒアリングなどを通じて課題を抽出し、ワークショップを開催してゾーニングから家具、施設、サインデザインに至るまで設計案を検討しつつ、具体的なオフィス設計においては、ユニバーサルデザイン提案の専門家である株式会社ミライロとパートナーシップを組み、技術監修等をお願いしました。

コクヨKハートの事業が成長してきたこともあり、当然ですがソフトである“人”、そして部署も増えてきました。それに比例して業務の質も向上しています。そこで、その中の活性化や、部門間コミュニケーションを促進していくことが一つ目の狙いです。

二つ目はここが一番我々の重要なポイントなのですが、ダイバーシティをインクルージョンできている状態ということは、どういうことを目的にするかを明確にすることです。

わかりやすく二極化して言いますと、法定雇用率を守ることのか、それとも様々な個性を持つ人たちと共に仕事を行い価値創造をしていくことなのか。特例子会社で法定雇用率は守っているけれど、私たちは障碍をお持ちの方と一緒に仕事を本当にしているのか、今の状態がインクルージョンと言えるのか、という問題提起から議論を進めてきました。今回は長期ビジョン実現に向けて、共に価値創造の仕事をしていこうと決め、一緒に商品開発に取り組むこととなりました。

三つ目は、障碍とは何を指すのかが明確になっていることです。車いすの方がいてオフィスに段差がある場合、障碍の社会モデルという考え方に着目し、誰もが過ごしやすい社会システムになっていないことが課題であると理解し、誰もが過ごしやすい社会システムを構築していくことに貢献していくこととしています。

―「HOWS PARK」という場を使って、雇用されている障碍のある方たちと、どのようにインクルーシブデザインの開発をしていくのでしょうか。

この1年半はこのオフィスをどう作っていくか、社内のインクルージョンの姿勢を作っていくかということを、プロジェクトチームで対話しつつ進めてきました。

これからは、HOWSPARKの場を活用して、Kハートの障碍のある方に商品開発のプロセスに入ってもらい、一緒に商品開発を実施していきます。そのような商品を販売していくことに加え、共に開発していくプロセスで感じた課題や解決方法も広く社会に開示をしていき、弊社商品だけではなく、多くの皆さまと社会システムをより良くしていくことを検討していけたらいいなと考えています。

―御社において「インクルージョン」している状態というのは、どういう状態なのでしょうか。

一言で言うと、「対話による相互理解」だと考えています。例えば車椅子の方が喫茶店に来たときに、椅子があったとします。あなたはどうしますか?ということを言われた際、一般的な考え方だと車椅子の方のために椅子をよける方が多いと思うんです。

しかし実は車いすの方のなかには、“座り替え”をして気分を変えるために喫茶店に来られてる方もいらっしゃるということを聞きました。なので、「何かお手伝いすることはありますか」という対話をしていくことが大切です。「椅子をよけてください」とか「ちょっと座り変えたいので肩を貸していただけませんか」など、同じ車椅子の方でも千差万別です。同じ目線の中で「対話」を繰り返していくことが大切だと感じています。

人と人との対話が重ねられるなかで、障碍のある方に対して気づきがあります。そこでそのことを表現するために“HOW”が飛び交う“PARK”にしたいということで、「HOWS PARK」という名称にしています。

―“らしさが集い、未来がひらく。みんながつながる創造広場”という同施設におけるコンセプトにおいて、その“らしさ”について教えてください。

障碍という身体的な特徴ではなく、、やはり基本は1人と1人だと言うことが前提としてあります。一人ひとりが違う個性を持っている。それを私たちは一旦、“らしさ”というふうに置きました。

個性が集まって、それが価値創造につながっていくという場所である、ということです。

―これからの未来をつくるにあたって、御社はどんな方々と働いて行きたいですか?

多様性があるので一概には言えないのですが、未来に対して挑戦をしていく方と働いて行きたいと考えています。また、我々の長期ビジョンやパーパスに共感していただける方に来ていただければ嬉しいです。

当社の長期ビジョンでは、「多様な価値観を尊重し合い、自己実現と他社貢献が両立する、誰もが活き活きと、働き、学び、暮らし、つながりあう未来社会」を自律協働社会と考えてています。

自律をしているけれどもコクリエーションン(協働)している社会です。例えると、会社で働いてるけれど副業してる、または大学生だけれど会社で働いてる、もしくは仕事をしながら大学に行ってるなど。いろんな自律をしながら社会とつながるということがこれからどんどん起きてくると考えています。そういう社会に馴染むことができる人材は、当社でも活き活きと働けると考えているんです。自律をしているけれどもよりよい社会システムを作るために誰と一緒にやっていけばいいのかを実験しながら自問自答できることも大切です。

私たちは実際に行動を起こしたりすることを“実験カルチャー”と呼んでいます。失敗も含めて公開する、その中のことで共感をしていただいて、一緒に働き方をクリエイトする。今までにはない、通常のサプライチェーンエンゲージメントみたいな仲間づくりではない、新しい仲間作りができてくるのではないかと考えています。

また、2023年の4月から『コクヨのヨコク』というのコミュニケーションにも力を入れています。特に学生や20・30代の方々にいまの当社に共感していただき、一緒により良い未来を作っていく仲間になってほしいという想いがあります。当社の新しいCMワークとライフの領域でお客様とともに明るい未来を作っていくという当社の目指す姿を知っていただきたいという想いで制作しました。

今までだとコクヨは文具やオフィス家具などのイメージが強いと思います。しかし現在は存在意義、パーパスとして「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする」ということを掲げています。私たちはお客様の課題に「共感」することで、新しい商品やサービスを生み出し続けてきたので、これからは一般の方々の日常におけるちょっとした困りごとの一つ一つにも目を向けながら、そこから新しい未来をつくる事業というのを考えていきたいと考えています。

 

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