クリア - 日本酒の未来を、人とともに醸す ~日本酒市場のグローバル化を加速させる企業~

世界中の人々の『心を満たし、人生を彩る』をブランドパーパスに掲げ、比類なき価値を提供する日本酒ブランドである「SAKE HUNDRED(サケハンドレッド)」を展開する、株式会社Clear(クリア 東京都渋谷区 代表取締役CEO生駒龍史)。2023年7月にブランド創業から5周年を迎え、ますます企業成長に拍車がかかる。

同社代表である生駒氏は2013年にClearを設立。2014年には日本酒専門のWebメディア「SAKETIMES」を創業する。日本酒という日本の伝統産業の市場で事業を営むなかで、その難しさに挑戦する。

同社代表の生駒氏に、これからの事業展開、そして日本酒市場の未来について聞いた。

-現在、国内の日本酒市場はかなり厳しい状態にあると思います。御社のラグジュアリーブランドである「SAKE HUNDRED」の展開先を、海外市場に広げていくということが現状打開の大きなカギになるでしょうか。

日本酒の市場自体はシュリンクしており、全体の出荷量は1973年から5分の1程度にまで減少している。日本酒の産業全体において、経済酒を中心に苦境にあるのは事実だ。

一方、純米酒や大吟醸酒などの特定名称酒は、横ばい、もしくは微減程度で収まっている。後者の購買層は、少量をゆっくりと味わったり、また「贈答品」として購入する人が多い。

さらにいうと海外に対しての輸出額は13年連続で伸びている。しかし海外において日本酒の市場が伸びているとはいえ、それも4100億円ほどの市場だ。高級アルコール市場全体でみると、大体11兆円の規模だ。さらに上のラグジュアリー市場は大体200兆円規模になる。その規模の中では、1%をとるだけでも影響力は大きい。そういった戦い方をしていくことによって、日本市場を超えた大きな成長を描いている。

-そこで重要になってくるポイントとはどんなことでしょうか。

商品力、ブランド力、販売力の3つを積み上げていくことだ。ブランド力はブランド認知の「量」と「質」だと考えている。誰もが知っていて、なおかつそれが良いものだという認知を得ることが非常に重要だ。国内外においてそのブランド力を向上させるための活動に今後もしっかり力を入れていく。

-御社が目指す、3年後の組織はどのような姿を描いていますか。

当社はスタートアップとして投資家より資金を預かって事業をしている企業だととらえると、上場を目指して成長を続けていく組織体だ。まずは、社会に対して成長性と健全性を認められるように、しっかり数字を積み上げていく。これから3年後に向けて成長していく過程において、日本酒を通した当社の売り上げ規模も拡大していくので、組織をグローバルにスケールすることも必然と考えている。

-では、200年後、次世代のさらに先の世界において、どんな組織であってほしいと考えますか。

恐らくたくさんのことが変化しているだろう。まず一つは、当社は「未来をつくる集団」であり続けてほしいと考えている。未来をつくるために、どの時代も挑戦し続ける組織であってほしい。自分自身が25歳で起業してから12年間、常に挑戦をし続けてきた。

起業当時はいろいろなひとからアドバイスをいただいたが、無理な挑戦だと否定的な意見もあった。難しい挑戦であっても、一生懸命お客様と日本酒に向き合い、チャレンジし続けたからこそ今の当社がある。誰かが常に挑戦し続けることで、良き未来が創られていくと考える。挑戦し続けることが、当社のアイデンティティになっている。当社の存在価値は、日本酒の未来をつくることにある。

また、私は人が好きで、人に対してまっすぐで在りたいという想いがある。日本酒を軸とし、それを通じて他者と気持ちの交流を大切する組織であり続けてほしいと思う。

-御社の“らしさ”ということを言葉で表現すると、どのような言葉になりますか。

当社には社員全員が大切にしている5つのバリュー(行動指針)がある。「いつでも誠実に」「共に成長する」「成果に執着する」「未来視点で発想する」「健康志向でいよう」を掲げている。

それを社内に取り組みとして落とし込むこともしている。健やかな健康の定義として、WHOの健康憲章があるが、心と身体の健康、そして社会的健康、この三つが掲げられている。これを会社の中でも大切にしている。

社員同士、助け合う姿勢を持ち、イベントを通じてチームの垣根を越えてつながることで心の健康を保つ仕組みを整えている。こういった仕組みは会社がつくるものだと考えている。施策や場づくりを通じてしっかり仕組化をし、会社の文化として浸透させることを進めていきたい。

-御社にこれから入社する社員が体験できる、「最高の体験」はどんなことが挙げられますか。

当社はグローバルラグジュアリーブランドを目指しているが、自らの手でつくりあげる機会を得られることが、最高の体験の1つになると考える。

日本発、そしてアジア発のラグジュアリーブランドを作る経験は、一生に一度、人生において経験できることではない。当社の取締役である御林の入社動機の1つは、自分の手でグローバルラグジュアリーブランドをつくり上げたいというものだった。誰もが経験できるものではない。とてつもなく難しい挑戦だ。元々はベンチャーキャピタリストとしてClearに投資をした彼だったが、自分の人生をかけてよりコミットしたいと考えジョインした、そのモチベーションが自分は大変嬉しかった。

-組織でこれだけは絶対やらないというこだわりはどういうことにありますか。

いろいろあるが、あえて細かいところでお伝えすると、悪口をいわない、ということ。企業組織にいる人たちはそれぞれが一生懸命に頑張っている。だからネガティブな言葉も出やすくなるかもしれないが、それを自分の感情の解消のためだけに使うと、組織の発展性がなくなってしまう。自分の感情を吐き出すのではなく、相手の成長のための一言に変換して伝えることで、組織は大きく変わっていく。お互いが本質的に向き合うこと、対話が大事だと考えている。

-どんな世界に価値があると信じていますか。

人の可能性を諦めない世界や、人をまっすぐに肯定できる世界だ。自分はドイツの哲学者であるエーリッヒ・フロムがとても好きなのだが、彼の著書『愛するということ』で描かれている「愛は技術である」という、愛する技術は後天的に身に着けることができるという内容が好きだ。日本酒には人間の人間らしい感情の揺らぎ、そこに対する肯定的な部分がにじみ出ている。

自分が自分であることを誰にも否定されない世界、多様性が当たり前にあり、それを皆が肯定している世界には価値があると考えている。それぞれの良さを理解し合うことが、良き未来をつくっていくと思うからだ。「肯定力」それがあってそのなかで自分の弱さや、それをもってどう進んでいけるのか、ということを考えていける世界が、多くの人にとって生きやすいのではないかと考えている。

-御社は今後どのように変化をし、未来を作っていきたいと考えますか。

当社はこれまで、壁を乗り越えながら成長を続けてきた。

これからも歩みを続け、歩いた道の後ろに新たな日本酒の歴史が紡がれていくような、新しい道を切り拓き続けていきたい。当社はこれからグローバルを目指す日本酒ベンチャーとして、日本酒の魅力をより鮮やかに世界に発信し、日本酒の未来をつくりつづけていく。

日本酒は、心、身体、社会的な人間の豊かさを満たす力があると考えている。その価値を今後も社会に発信し、挑戦し続けることで、一人ひとりが「豊かさ」をより実感できる良い社会にしていきたい。

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