ハッカズーク – 辞め方改革が日本のHRを変えていく アルムナイ(退職者)が資産となる時代へ~退職者と企業の新しい関係を構築~

退職者と企業との別れは資産になっていくー退職で終わらない「企業と個人の新しい関係」を実現し、退職による損失のない社会を作る』をビジョンに掲げる株式会社ハッカズーク(東京都新宿区、代表取締役CEO鈴木仁志)は、「アルムナイ」という領域でサービスを提供するHR Techスタートアップ企業だ。本来、アルムナイとは大学等の卒業生を意味する言葉であるが、HR領域では「企業の卒業生、退職者、OB・OG」を指す。そこに対し同社はアルムナイ特化型SaaS「Official-Alumni.com」の提供や、アルムナイに関する最新情報やノウハウなどの発信メディアである「アルムナビ」、アルムナイに関するコンサルティング事業を幅広い企業に提供している。

アルムナイが循環する、あらゆる人材が躍動する社会

日本社会においては、少子化にともなう労働市場の縮小は避けられないという現状がある。そのため人材の獲得競争は年々激化しており、採用に関わるコストを削減する目的でリファラル採用やダイレクトリクルーティングなど新たな採用手法に目を向ける企業が増えている。

一方、海外においては、退職者との関係を退職という事実によって終わらせることなく、その後の関係構築をすることで退職者の資産化を図り、新たな人材としての価値を創造していく取り組みが広がっている。いわゆるオンボーディングではなく、オフボーディングの概念が大きく存在する。

オフボーディングとは、退職するまでの一連の体験を向上させるための施策のことをいう。退職という“出口”での体験を良いものし、退職後も企業との良好な関係を築くことで、さまざまな人材に関するメリットを生み出す可能性が生まれる。

それは今後の日本における労働市場においても重要な視点といえる。個人が経てきたキャリアに希望を持ち続けられる仕組みができ、あらゆる人材が、躍動する時代になっていく可能性がある。

様々な組織でアルムナイが必要とされる時代

同社が提供する「Official-Alumni.com」の導入企業の全体数などは非公開だが、大手自動車メーカーや大手商社などのリーディングカンパニーがその導入を進め、活用している。さらに国立大学や行政、社団法人やプロスポーツチームなど、退職者を必要としている組織は企業だけではない。今、個人との新しい関係性をつくり、新しい未来へ向かおうとしている組織が増えてきている。

同社サービスの導入した企業側のメリットは、アルムナイとの関係を継続、発展させ「資産」とすることができ、かつ人材確保の選択肢を広げることができることが大きい。またアルムナイを通じて企業側が得られる知見によってより良い組織と事業にすることで、現役社員のモチベーションが高まる。そして、その企業で得た経験を活かして魅力的なキャリアを歩んでいるアルムナイの活躍や、アルムナイという概念を取り入れた人材戦略を展開しているということも、企業ブランディングにとってプラスにつながる。また、その企業のアルムナイとして登録したメンバー同士も交流できるので、登録メンバーにとって情報共有ができるというプラスの側面がある。

また、人的資本に関する社会的な潮流も大きく関わっている。例えば、人的資本経営は、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方だが、今、その情報開示をもとに投資家が企業価値算定をする時代になっている。つまり企業は情報開示をするだけではなく、自社の人材戦略を市場に訴求することが求められているのだ。

アルムナイに対する独自のノウハウで差別化

同社サービスを導入したクライアント企業のアルムナイがそのツールに登録することで、アルムナイは企業からの再雇用情報などを一方的に得るだけではなく、古巣企業に協業提案をしたり、アルムナイ同士でゆるく繋がったり、ビジネスのネットワーキングをしたりすることが可能だ。アルムナイが定期的にアクセスをするようになるため、企業はアルムナイのエンゲージメントを高めて、アルムナイの協業や再入社意欲を醸成することが可能だ。一方、他のツールでは再雇用のみを目的としたツールが多く「今、再入社したい」アルムナイだけに対してのアプローチが可能になり、登録者の意欲を長期的に醸成することは難しい。

2017年、まだ日本においてアルムナイという言葉があまり広がっていない時代に同社は創業し、事業展開をする中でアルムナイに対する自社独自のノウハウを培ってきた。それは現在、他社との大きな差別化につながっている。具体的には、そのノウハウをもとに導き出されたベストプラクティスによるサービス提供が可能であること、さらに他サービスツールの運用と比較してもユーザーの月間アクティブ率が高いことにある。

スーパー利己的で、コンプレックスを持っているメンバーが多い組織

「変化するライフスタイルに、人と組織が適応するためのサービスを提供する」というミッションを軸に、同社はメンバー全員で事業成長を推し進めている。

そこで同社が必要としている人材は、「超利己的な人がいい。そして自分に対して強いコンプレックスを持っている人」と、鈴木氏は笑顔で話す。「願望を叶えるためには、周囲の協力が必要。それを得るには相手が何を求めているかを考える。利己的であればあるほど周囲を巻き込む力が強い。そして個人の持つコンプレックスは基本的に原体験があるが、ほとんどのケースで、一生解消されません。それを解消するために、人は一生頑張り続けるしかないんです」同社メンバーは、それぞれの持つコンプレックスを乗り越えたいという想いと共に、成し遂げていきたいことをもつ。だからこそ、熱狂をもってこの事業に関わっていける。

一年半前にジョインした同社の大森さんは、以前は経営コンサルタントとして中小企業の経営を支援していた。大森さんもまた、解消されないコンプレックスを持ち続けている。「クライアントと同じ視点で仕事をすることができていないのではないか、というコンプレックスがありました。なぜなら自身が経営者になったことがないから」仕事のクライアントと向き合うたびに、その感情を突き付けられた。

「本当の経営改善をするために自分で事業を創れるようになりたい。当時、本気で取り組んで向き合い続けたことで、いまだにプライベートで付き合いのある社長はたくさんいます。しかし、完全に同じ視点で話し切れていないという想いがコンプレックスなんです。今の仕事を通じて、自分の目指す私の“在り方”を実現していきたい」大森さんのコンプレックスや利己の部分は、誰かを幸せにする利他にもつながっている。

ハッカズークが目指す、自社と社会の未来

鈴木氏が目指す同社の未来の姿は、あえて具体的にしていないという。「見えていない方が、その出会いや可能性に対してワクワクできるから」というのが理由だ。同社の社名の由来は「Hack(ハック)」「Kazoku(家族)」「Zouk(ズーク)」成り立っている造語だが、最後の「Zouk」はフランス語で「フェスティバル」の意味もある。自分たち自身が仕事を楽しんでいくこと、そして多様性を認め合い、且つそれに個人や組織が対応できるような世界にしていくこと、そういった未来をつくり、残していく想いが社名に込められている。

さらに鈴木氏は社会の未来像をこう語る。「私たちの子ども世代が大人になったとき、親世代の退職という概念に驚いてほしい。『お父さんたちの時代の退職者はそんな見られ方をしていたの、信じられない』というくらいに。子どもたちが生きる未来では、退職者と企業はお互いに資産であることが当たり前になっていて、組織の形が今よりシームレスになっている。」同社は事業を通じて、社会に「退職者」という概念を問い続ける。退職者と企業の別れが資産になっていく社会にしていくため、同社は強く歩みを進める。

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