企業の存在意義(パーパス)や社会的価値への貢献を重視した経営(パーパス経営)をおこなっている企業を紹介する特別企画

株式会社WALTEX|企業や人の「志」を支援する。「人を幸せにしたい」という夢の先にあったもの

大手からベンチャーまで群雄割拠するデジタルマーケティング業界において、起業からわずか5年で年商2億円を達成した、株式会社WALTEX。社長の浜中広助氏は、社名に「WALT」を冠するほど「ウォルト・ディズニー」に心酔し、一時はオリエンタルランドへの就職も考えたくらいの大ファンだと言います。テーマパークやエンターテインメントとはまるで畑違いの業界に飛び込みながらも、ウォルト・ディズニーのように社会に「喜び」や「幸せ」を届けたいと思い続けた浜中氏が、その夢を叶えるまでの軌跡を伺いました。

優秀なメンバーが、必ず成果を出す会社だと胸を張って言える

WALTEXは、一言で表現するとWEBの広告代理店です。運用型広告を中心に、そこから派生したランディングページやバナーを始めとしたクリエイティブ製作などを請け負っています。広告戦略の立案に強みがあり、運用型広告領域に関わることは、ワンストップで幅広くお手伝いしています。先日、創業5周年を迎えました。
当社には、現在(2024年4月4日時点)18名のメンバーが在籍しており、その中の6~7割が副業として業務委託を引き受ける形で関わってくださっています。そのほかの方も、フリーランスという構成です。オフィスも設けておらず、メンバーとのやり取りは基本的にオンライン、フルリモートという働き方をしています。

当社は、クライアントの予算規模で受託の是非を決めていません。業務委託でメンバーを構成しているのは、エース級人材をチームに入れてクライアントに質の高いサービスを提供できるからです。人件費を流動的にすることで、予算にこだわらず成果の出るサービスを提供できています。
メンバーは、どこに行っても高い実力を発揮できる、誠実な方ばかりです。お客様とのコミュニケーションが丁寧で、ニーズの取りこぼしがなく、チームで協調して働くことができる。常に最大限の成果を上げられるメンバーたちだと胸を張って言えます。

うちの強みは、やっぱり人材です。サッカーのうまい人はどのチームに所属しても強いように、広告の世界でもそれは同じです。実力のある人がいれば、そうとは言えない人もいる。1年目では知識もスキルもまだ身についていませんが、5年も仕事を続けていると、勘所がわかってくるし、お客様の業界に対する知見も増えて、成果がどんどん出るようになります。WALTEXが業務委託を中心にしているのは、高いスキルを持つ人だけでチームをつくり、クライアントに成果をお返しする確率を最大限高めたいという思いがあるからです。

優秀な人材でのチームづくりに加え、当社では、ユーザー体験に裏打ちされた広告戦略の立案を大切にしています。これまでの広告の世界では、購買者の「ペルソナ」の設定が大事だとされてきました。けれども、想像上のペルソナよりも、自分がユーザーになってみるほうが、格段にその商品を使う人の気持ちがわかります。当社で広告を出させていただく商品やサービスは、可能な限り自分たちで実際に買って担当するメンバー自身にユーザー体験をしてもらうことで、購買者の目線を広告の設計に生かせるようにしています。

志のある企業を支援すれば結果が返ってくる

それでも、チームビルディングの成果が出て利益につながるようになったと思えるようになったのは、この一年ほどのことです。それまでは僕の中で「何のためにこの会社を経営しているのか」を明確に言語化できておらず、社内の意思統一の部分が弱かったのだと思います。今のような強いチームがつくれたのは、会社のパーパスを「志を支援する。」と定め、経営の軸としてからです。

起業したばかりの頃から、会社のビジョンを描いて示すことはとても大事だと思っていました。そこで自分なりに大切にしていた価値観である「夢・愛・目標・仲間・成長」といったワードをちりばめたプレゼン資料を作って、営業に出向いていたんです。
けれども、この説明がとにかく恥ずかしい。もちろん、真剣にこれらを叶えたいと思ってはいるのですが、「僕が目指している未来は、夢、愛、目標、仲間、成長をテーマにした……」と語っていると、恥ずかしさが勝ってしまいます。それでも熱量だけは伝えることができて、この熱意を買ってくださったお客様とは今もお付き合いが続いていますが、さすがに口に出せないビジョンのままではまずいだろうと思っていました。それで、もっと明確で短い言葉を探していたんです。

ちょうどその頃、EC関連の事業を始めた会社の広告をお引き受けする機会がありました。僕は『ビジョナリーカンパニー』という本に傾倒していて、自分の会社も社会に影響力を持つ素晴らしいものにしていきたいと思っていたんです。そのクライアントの方も同じ本に感銘を受けておられて、お互いの志に共鳴するところがありました。それでWALTEX一丸となって支援すると、どんどん売り上げが伸びていきました。「先義後利」という言葉もありますが、志のある起業を支援すれば、いずれ結果が返ってくるものなんだと学べました。
そのとき、「ああそうか」とわかりました。創業当時は生き残るのに必死だったこともあり、利益のために「クライアントを受注できればそれでいいんだ」という考えで広告を引き受けたこともあったけれど、それではいけない。お客様に誠実に向き合っていない企業、志のない企業はいずれ廃れる。それに、志に共感できる人と仕事をするのは、こんなに楽しいことだし、自然と応援したい気持ちにもなる。大事なのは「志」だったんだと思い至り、現在のパーパスが生まれたんです。

パーパスが明確になると自分の考えも明確になる

現在のパーパスを定めてから、仕事だけではなく普段無意識に考えていることも、実は「志を支援」していたんだな、と気づくことがよくあります。
例えば、僕ら夫婦は子どもが欲しくて不妊治療を頑張っていますが、子どもが欲しいというのは「人生の志」です。もちろんできる限りのことをして妻をサポートしたいですし、同じように頑張っている人の志は応援したいと思います。
先ほどもお話ししたように、うちには正社員がおらず業務委託でお願いしています。そのメンバーの中には、同じように自身の描く「人生の志」に向けて不妊治療を頑張っている方がいます。その方が風邪で一週間休んだ後に「長く休んだ後で心苦しいんですが、来週のこの日に治療があるのでお休みさせてください」と申し訳なさそうに言ったんです。
当然ですが、申し訳なく感じる必要なんてありません。僕は働いてくださるメンバーの志も応援したいから、「遠慮なく自分のことを優先してください」「それがあなたの志でしょう」と本心から思っています。いつも働いてくださっているんだから、家族や自分のために1日や2日休むことに負い目を感じてほしくありません。

そうしたことを言っていると「社員を大事にしている」という評価をいただくことがありますが、自分の思いを大事にしているだけです。バリバリと働くことが正義だとされているハードワークな会社では、僕は甘い経営者だと思われてしまうでしょう。でも、そんな会社を僕はつくりたくない。僕の会社で僕が嫌だと思うことをしないようにしているだけなんです。僕は経営者として、メンバーが過酷な環境で働かなくても会社が伸びる仕組みを構築し、理念に沿った意思決定で、木の年輪のようにじっくり会社を成長させて行きたいと思ってます。

自分に正直に動いたほうがうまくいく

普段から自分の「好き・嫌い」「こうしたい・したくない」で行動を決めていると、仕事もパーパスに則って選別でき、うまく回っていくようになりました。
例えば、僕らは仕事の受注金額よりも、その会社の志で仕事を選びたいと考えています。WALTEX独自の定義として、「広告主の志=エンドユーザーに誠実に向き合っているか」「自分達がユーザーの立場に立ったときに“使いたい”と思うか否か」を判断軸にしています。
WALTEXは、先ほども言ったように予算規模問わずに受注している事から、配信初月の月額予算が低めの広告主様もお手伝いしております。でも、広告を出す側としてはデジタルマーケティング業界のことをよく知らないので、やっぱり大手の方が安心だろうと思いますよね。
それで、まずは大手に相談に行くんですが、予算の折り合いがつかないこともあります。大手では、利益を出すために足切りラインが定まっている会社もあり、それ以下では引き受けません。僕らは、その10分の1の予算であっても志が素晴らしければ引き受けるし、安いからといって絶対に手を抜かない。支援体制も、金額で差をつけません。大事な予算をお預かりしているのは同じなのに、その金額で差をつけるなんて、志をないがしろにすることです。
それに、志の良し悪しとは結局のところ僕らの主観でしかないのに、「この企業は誠実にエンドユーザーと向き合っているし、支援したい!」とお引き受けした会社は、実際にしっかり広告配信が伸びており、利益を得ることができています。志を軸に判断し、ほかの代理店から足切りされてしまった企業様の小さな種を大きく育てる事ができるのが、WALTEXの強みだと思います。自分自身に嘘をつかないということを大事にしていると、不思議とうまくいくんだなと実感しています。

ここまで頑張ってよかったと思った妻の言葉

僕はもともとウォルト・ディズニーが大好きで、彼のように人を楽しませたり、幸せにしたりできる人になりたかったんです。新卒でオリエンタルランドを受けましたが、ご縁はありませんでした。
それなら、昔からかっこいいと憧れていた「社長」になろうと舵を切りました。僕の実家は地元で自動車屋を営んでおり、祖父が初代、父が2代目です。小さい頃から自営業で働く父を見てきていたので、オリエンタルランドが無理なら社長だ、と即決できました。
当時の僕は、成功した起業家はみんな20代で起業しているという印象を持っていました。それなら、僕も社会人3年目が終わる25歳までに起業しようと決めて、そこからは、社長になるための力をどうつけるかという視点で就職先を探しました。

新卒で入ったオプトには、成長中のITやデジタルマーケティング業界のスキルを学ぼうと入社し、その後中小企業向けの営業スキルを学びたくてウエディングパークに転職しました。そこでの在職中に、副業で今の仕事をはじめています。先に独立した先輩から「副業で5社受注し、月50万円利益を上げられたら合格だ」と聞いていて、それをクリアしたタイミングで独立しました。
当時はまだ20代。どれだけ稼げるのか自分を試してみたいという欲求がエンジンとなって引っ張ってくれましたが、それと同じくらい「お客様や働くメンバーに喜んでもらえる理想の代理店をつくりたい」とも思っていました。そういう意味ではあの頃の夢は叶ったと言えるのではないかと思います。

創業5周年を迎えて、これから5年、10年先の将来へ向けた新しい夢についても、よく聞かれます。僕はゆくゆくはウォーレン・バフェットのような投資家兼経営者になりたいと考えています。といっても、仕事を鞍替えするのではありません。今の会社は大好きですし、経営が楽しいので売却する予定もございません。この会社で理念をぶらさずに年商10億円を超えたら、「起業家の志を支援する。」コンセプトの元、エンジェル投資を本格的にして行きたいと考えてます。
昨年から1社エンジェル投資をしているんですが、若い起業家に自分が経験してきた知恵を伝えるのは楽しいし、それが相手と自分の利益になるのもまたうれしい。自分だけ得したいのではなく、みんなに利があって楽しいという状態が好きなんです。

ウォルト・ディズニーという人は、世の中に幸せや楽しさを届けたい人、とても好奇心が旺盛でいろんなアイディアを試してみたい人だったんです。僕も彼と同じように、自分で組織づくりのアイディアを試してみたり、「これが好きだ、これが幸せだ」って思う価値観を会社の経営に取り入れたりと、新しいことにチャレンジしてきました。その結果、メンバーにもお客様にもそして消費者にも幸福を届けられる会社をつくれた。
先日、妻と話していた時に「あなたは、一種のテーマパークを会社という形で創れたんじゃないかしら」と言われました。そうだとしたら本当にうれしいし、頑張ってきてよかったなと思います。

 

 

関連記事