株式会社タニタ|先輩社員インタビュー ヘルスメーターのリーディングカンパニー企業として、全ての人の「健康」をつくり続ける

ヘルスメーターなど「健康をはかる」機器でおなじみの株式会社タニタ。
東京都板橋区にある本社で、総務部総務課課長及び人事課課長の南佑司さんにお話を伺いました。

グループ全体で
さまざまな角度から「健康づくり」にアプローチ

南さん:「健康をはかる」機器を製造・販売している会社です。ヘルスメーター、体組成計のほか、クッキングスケール、塩分計、歩数計、さらにはエキスパンダーなどのトレーニンググッズも取り扱っています。体脂肪計は弊社が世界で初めて開発したもので、世界約120カ国で、累計1億台以上を販売しています。

体組成計をはじめとするタニタブランドの製品

「タニタ食堂」は、弊社のグループ会社である株式会社タニタ食堂が展開する事業の1つです。この他にも、自治体や企業向けに健康プログラムなどを提供する株式会社タニタヘルスリンクや、女性専用のフィットネスを展開する株式会社タニタフィッツミーなどのグループ会社があり、全体で「タニタ」というブランドを用いています。

ベースに弊社の計測機器があり、それを用いてグループ会社がそれぞれの強みを生かしたサービスを提供しています。機器だけでなく、運動や食などさまざまな角度から健康づくりにアプローチできることから、「タニタ」ブランドとして、健康総合企業を掲げています。


―歴史を見ると、1944年の設立時はシガレットケースなどを作っています。それがなぜ、健康総合企業になったのでしょう?

南さん:当初は金型による金属加工を得意とする会社だったと聞いています。1950年代にはOEM(他社ブランドの製品製造)でトースターなど家電商品を製造していたのですが、それだと業績が発注元次第となり、不安定です。「何とか自社ブランドを持ちたい」と着目したのが体重計でした。

創業者(谷田五八士=いわじ)は、米国では一般家庭に体重計が普及していることを察知し、「日本でも家庭で体重をはかる時代が来る」とピンと来たようです。

創業家2代目社長(谷田大輔)のときに、医師から「肥満というのは体重が重いことではなく、体重に占める脂肪の割合が高いことだ」と教えられました。「それならば、体重計メーカーとして脂肪をはかれるものが作れないか」と取り組んで誕生したのが、世界初の乗るだけで体脂肪率がはかれる体脂肪計です。そこから健康総合企業への歩みが始まりました。

食堂のレシピが生まれた経緯


―医師の一言にヒントを得たのですね。

南さん:もともと創業家2代目社長は、健康への関心が高かったようです。スポーツ好きで、体形にも気を遣っていたと聞きます。

その証拠に、体脂肪計を開発する2年前、本社内に「ベストウェイトセンター」という肥満予防・改善の専門施設をオープンしました。これは、クリニックと栄養指導、運動指導を併せ持つ、会員制の有料施設でした。

栄養指導では、十数人の管理栄養士が、1食500キロカロリー、塩分2グラム前後で構成するレシピを考案しました。これが、現在のタニタ食堂の日替わり定食の前身となっています。(健康な社員に提供するため、現在の栄養価は1食500キロカロリー前後、塩分は3グラム以下に変更)

施設そのものは1999年頃に閉鎖となったのですが、厨房や食事がとれるスペースを活用して社員食堂をオープンしました。その後、2010年に社員食堂メニューをまとめたレシピ本が出版され、大きな注目を集めました。

そこから発展して、東京・丸の内に「丸の内タニタ食堂」をオープンし、食品メーカーをはじめとした異業種とのコラボレーションが始まったのです。


―なるほど。あのレシピの背景にそのような経緯があったのですね。

南さん:健康計測機器のメーカーとして「健康をはかる」ことを社業としてきたわけですが、できることが広がり、今では「健康をつくる」ことにシフトチェンジしています。象徴的な取り組みとしては、「タニタ健康体重基金」や「タニタ健康大賞」が挙げられます。

「タニタ健康体重基金」は、肥満や生活習慣病をなくすための優れた研究に助成金を出すもので、1994年(設立50周年)に創設し、2021年末までに181件の研究・活動を支援しています。

もう一つの「タニタ健康大賞」は、毎年、日本人の健康づくりに貢献された個人・団体を顕彰しています。2021年は元プロ卓球選手の水谷隼さんに贈呈しました。話題に触れていただき、多くの方が健康に関心を寄せてくださることを期待しています。

秋田県で医療費22億円の抑制を目指す
健康プロジェクト


―こうした取り組みは社会貢献事業になるのだと思いますが、その点では、何より本社の隣にある広場が印象的ですね。今日、ここに来る際に見かけ、その大きさに驚きました。

ふれあい広場の小路

南さん:子どもたちが安心して駆け回ったり、高齢者の方が散歩できたりすればと、1990年に誰でも利用できる「ふれあい広場」を本社敷地内に開きました。全周約150メートルのウォーキングロードがある芝生敷きで、2020年にさらに全周136メートルのエリアを拡張しています。

ここでは、文字通り地域の方々と触れ合う「ふれあい広場健康まつり」を年に1度開催しています。

また、社員が昼食時に利用したり、時には青空ミーティングを開いて自由に意見を出し合ったりするなど、心身をリフレッシュする場にもなっています。

ふれあい広場には、足裏にアプローチしたデザインの小路もある


―地域とのつながりも大事にしているのですね。

南さん:本社のある板橋区とは、区立教育科学館と共同企画展(2022年の「体感する体の科学」)を行うなど多彩な連携をしています。そのほか、隣接区の豊島区とは、弊社の熱中症指数計を活用する熱中症予防対策の協定を結ぶなどしています。
また、弊社の生産工場がある秋田県大仙市ともさまざまな連携事業を行っています。2020年には、全市民・在勤者を対象とした大規模な官民連携ヘルスケア事業をスタートしました。
市内26カ所に体組成計や血圧計を設置した「健幸スポット」を開設したり、参加可能な全ての対象者に弊社の活動量計を無料配布したりするもので、2030年度までに大仙市民の年間医療費を約22億円抑制することを目指しています。


―一企業ながら、地域行政に関わって医療費の削減に貢献するわけですね。

南さん:そういう点では、地域だけでなく、国の保健・医療行政にも関わりを持っています。2010年から2年間勤務で1人ずつ、計6人を、中央省庁へ出向させています。社員個人のキャリアアップに限らず、弊社の知見を国の事業に生かせるように努めています。ちなみに、経済産業省と厚生労働省の地下1階にあるKENKO食堂では、タニタ食堂の定食を提供しているんですよ。

社員の健康づくりの取り組みにAmazonポイントを活用

後ろには秋田杉のオブジェ。タニタは秋田に生産拠点がある。


-社員の健康づくりにも熱心だと聞きました。

南さん:「ヘルスメーターを販売している会社の社員がメタボでは説得力がない」という危機感から、2008年に「健康経営」への取り組みをスタートしました。
もちろん根底には、社員の健康を守りたいという経営陣の思いがあったようです。


―具体的にはどんな取り組みをなさっているのですか?

南さん:象徴的なのは、社員証と一体化した活動量計です。1日の歩数や消費エネルギー量などが計測できます。これを活用して、社員一人ひとりが目標値を設定し、「前回は1日平均3,000歩だったから、今回は4,000歩を目指してみよう」という感じで、3カ月を1タームに取り組んでいます。目標を達成したら、AmazonポイントやWAONポイントに交換できるポイントがもらえます。多い人で6,000ポイント、私自身は3,000ポイントほどもらったことがありますね。ポイントは、体組成計での計測や、「何キロ痩せます!」などの健康宣言をすることでももらえます。

また、自分が食べた食事を撮影し、アプリケーションに写真をアップすると、アプリ内のみならず社内に設置されたデジタルサイネージなどで公開されます。それを見た社員同士で「○○さん、ラーメンが続いていますね」といったコミュニケーションが生まれています。食べ物や歩数の話は、役員も若手も同じ土俵で話せるのがいいですね。

そのほか、テレワークでメンタル不調になりやすい状況を鑑み、外出機会やストレス発散の観点から、サテライトオフィスとしてカラオケボックスを活用しています。また、会社でも自宅でもできるオリジナルの「タニタ体操」の実施や、健康に配慮した昼食の提供など、さまざまな取り組みを行っています。


―からだだけでなく、心のケアも考えられていますね。

南さん:本社の社員数は約200人の規模なので、仲間意識が強いというところがあるかもしれません。社長室のない会社で、社長は社員と同じフロアにいます。
イベントも多く、花見、ビアパーティー、クリスマス、忘・新年会、節分などがあります。また、社内にある「ICOU」では、終業後に社員同士でお酒を飲みながらコミュニケーションを取ることができます。ただし、「ICOU」の利用には、「1人で飲んではいけない」というルールがあるんですよ。
また、野球やテニス、バドミントンなどクラブ活動も盛んです。
さらに、いわゆるサンクスカードのような取り組みで、お世話になった人に1票を渡すという「360度評価」というものもあります。上司でも部下でも誰を評価しても良い制度で、自分の1票が1万円の価値を持っています。渡した相手に、会社から1万円が支給されるのです。私が聞いた範囲では、1回に18万円を手にした人がいますね。

個人事業主となって業務を請け負う新しい働き方


―面白い取り組みをいろいろなさっている会社のようですが、特に驚く取り組みに、社員が個人事業主になるという仕組みがありますね。

南さん:社員が会社を退職して個人事業主になり、弊社と業務委託契約を結んで仕事を続けるという仕組みです。「日本活性化プロジェクト」と名付け、社会に新しい働き方を提案しています。
実は、私自身もこの仕組みを利用しています。ですから厳密には、株式会社タニタの社員ではないのです。
総務課課長、人事課課長としてやるべき業務を明確にし、それを基本業務として契約した報酬で働いています。それに加えて、臨時の業務が発生した場合は、追加業務として別途で報酬が支払われます。

今、約30名がこの仕組みを利用しています。確定申告で経費計上などができることもあり、ほとんどの人が手取り収入をアップさせています。会社規程の就業時間に縛られずに働けることもあり、主体的に動きたい、情熱的に仕事に取り組みたい、という人にはとても魅力的な働き方だと思います。発案者の社長が執筆した『タニタの働き方革命』(日本経済新聞出版社)という本があるので、関心がある方には、ぜひご一読いただきたいです。

いずれにせよ、この業務形態が象徴するように、弊社は自主的に動けるかどうかが重視されています。人事課長としては、リーダーシップを取れて、周りと円滑なコミュニケーションを図れる方が増えるといいな、と思っています。

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