株式会社鈴工|木材加工の根幹を支え、建築の最先端を見据えたプラントエンジニアリング

古くから日本人の心のよりどころであった伊勢の神宮。内宮境内には、参拝前に心身を清める五十鈴川が流れ参拝者を迎えている。

昭和54(1979)年、この五十鈴川から“鈴”の字をもらって創業した株式会社鈴工は、今や木材加工のプラントエンジニアリングの部門で業界の熱い注目を集めるトップランナーとして、さらに世界へと飛躍しようとしている。

山から木を切り出し、構造材や建材といった最終製品になるまでには、木材を製材したり接着したりと多くの工程がある。同社はそこで用いる機械を主に欧州から輸入し、各工程間をどのような搬送ラインでつなげば一番効率よく搬送できるかを考え、工場全体のレイアウトを提案すると同時に、その工程間をつなぐ搬送装置を自社で開発・製造している。

つまり、メーカーと輸入商社の両方の機能を生かして、取引先にとって最も効率の良い製造ラインを、プラントとして販売する。

地球環境に対しての意識の高まり、そして企業の在り方が問われる中、同社が構想する木造高層ビルの需要は都市部でも広がりつつある。その需要に対して、木材加工という領域で同社は今後大きく関わり、日本においてのイニシアチブをとっていく方向だ。

五十鈴川河口の本社にて、社長の牛場正人さん、人事課の宇仁田啓市さん、エンジニアの瀬古さんに話をお聞きした。株式会社鈴工が描く木材が彩る未来とは。

「チャレンジ」を社是に、木材加工自動化機械メーカーからプラントエンジニアリングへと発展!

昔は、木材を加工する機械に対して、人の手で一本ずつ板を持ち上げて投入し、加工後はまた同様に人力で積み上げていました。非常に危険で効率も悪い重労働だったのですが、生産能力の向上もさほど必要とされていなかったので、なかなか機械化が進まなかった歴史があります。

ところが、1995年の阪神大震災によって事情がガラリと変わったのです。多くの木造家屋が倒壊し、ハウスメーカーから住宅の強度を高めたいとの要望から、品質が保証できる構造材である「集成材」の需要が一気に高まりました。

集成材とは、複数の板を接着剤で接合した一種の工業製品のことを言います。需要の高まりと同時に、おのずと生産効率もシビアに問われる時代になり、高性能な搬送装置の価値がだんだん認められるようになってきました。そんな中、取引先からの難しい要求に応えてきた結果、現在の弊社事業があるのだと思っています。

実は今、木材の使われ方が大きな転換期を迎えています。弊社は社是に「チャレンジ」を掲げ、社員に浸透させていますが、まさに今こそ会社一丸となっての「チャレンジ」でありチャンスの時です。

世界で注目を集めるCLTで、日本にも木造高層建築物を!地球環境に貢献する事業

今までの木材はほとんど住宅向けの構造材・建材としてのみ使われてきました。このままだと、木造建築の未来は先細りです。日本だけで見ると、人口減少に伴って一般住宅の新築着工数が増える見込みはほとんどないからです。

ところが、世界規模で見ると、木材を高層ビルの建築に使おうという動きが広まっているのです。そこで注目を集めているのが、CLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー)という素材です。従来の集成材は、板の繊維方向を平行に揃えて貼り合わせるのに対して、CLTはその名の通り板を直交するように積層して接着した厚型パネルのこと。寸法が安定しており、断熱性に優れ、パネルとして利用することで高い耐震性をも確保できます。

さらに、日本では杉を使うことが一般的なのですが、比重が軽く断熱性能が高い杉材は、CLTの原料として非常に適していると言われています。

すでに欧州ではCLTを使って20階を超えるような木造高層ビルが建ち、日本でも都市部を中心に10階建て程度のビルはさかんに建設され始めています。今後、CLTの需要がさらに高まることを考えると、そのための加工工場への設備投資が課題となることが予測できます。

弊社では、パネル製造や加工などCLT製造に関する最新鋭の機械設備を世界中から輸入し、取引先の工場に最も適したプラントとしてご提供できる体制を取っています。この分野でも、わが社がリーダー的な存在として動いていきたいと考えています。

SDGsへの関心の高さが、営業成績を後押しする

木造高層ビルは、環境問題との関連でも注目を集めています。世界的な動きとして、建築現場においてもできるだけCO2排出量を削減し、低炭素・低環境負荷型の工程であることが求められているからです。欧州などでは環境負荷の大きな建築資材を使っていると許可が下りなくなるという方向に進んでいます。

ご存じのように、木材は植林から成長する過程でCO2を吸収し、内部に固定します。つまり、CO2排出どころか固定化に貢献している。言い換えれば、加工木材でビルを建てることは、都市の森林化につながることです。この世界的な流れはもう止められない。日本もそうならざるを得ない状態になってきています。

さらに、長年叫ばれてきた日本の林業問題の解決にも道が開けています。先年のウッドショックを機に、海外の木材に頼っている場合ではない、国産材を見直そうという動きが高まってきています。CLT等を利用する大型木造建築物によって木材の需要が高まれば、山にお金が還元され、まじめに林業に取り組む人も増えるはずです。林業そのものへの注目も集まり、成長産業として見直されることになるのではないでしょうか。

実は、私の自宅はCLTを使った日本初の戸建て住宅です。断熱・蓄熱効果が高いので冬暖かく、夏涼しく、冷暖房効率も抜群です。以前住んでいた鉄筋コンクリートのマンションでは、冬は結露がひどかったのですが、CLTの家ではまったくありません。杉材の良い香りが残り、家の中で焼肉をしても翌日はもう匂いが消えているほどの消臭効果もあります。

柔らかい杉の長所を生かし、強度が低いという弱点を補ったのが、CLT工法。構造材としてももちろん、家具や床材といった建材として使っても快適なのです。

低炭素・低環境負荷型の木造建築についてもっとたくさんの方に知っていただきたく、啓蒙活動として2022年10月に「鈴工CLT Research & Design Lab.」を立ち上げました。機械の販売目的というよりも、まずはCLTを含めた木材利用や木造建築についての最新情報を知ってもらい、業界だけでなく一般の方々にも情報交換の場として利用いただけたらと考えています。

今後の活動としては、セミナーや海外視察ツアーを企画していく予定ですが、まず第一回目のイベントとして2023年1月26日にオンラインシンポジウムを開催し、スーパーゼネコン各社の最新木造建築技術などについてお話しいただきました。

知れば知るほど面白い。三重から世界へ働くフィールドを広げる。

弊社の事業は木材加工の観点から低炭素・低環境負荷型の建築を目指すものですが、ここ2~3年、こうした取り組みに対する反応が目立って良くなっていることを感じます。特に学生の方々のSDGsへの関心や知識は、非常に高いと感じています。

営業の現場でも「話がしやすくなった」という声が上がっています。まずSDGsのバッジをつけている人が増えましたね(笑)。

他の業種から見ても、環境への負荷という点で、木材は本当に非の打ち所がない建築資材。きちんと計画的に植林・伐採をしていけば、永久的に枯渇することのない資源です。取り尽くして終わりというものではない。

お飾りのSDGsではなく、実質を伴った本当の意味で持続可能、サステナブルな資源であることを理解していただいています。そして、その事業を通じて世界へとフィールドを広げるため、社是である「チャレンジ」をもとに、共に会社の未来を創ってくれる方を募集しております。

-2022年4月に入社の人事課の宇仁田さんに、鈴工での働き方ややりがいについて伺いました。

人事課・宇仁田さん

宇仁田さん:私は中途入社だったのですが、一度県外に出てUターンを志望する立場からは、三重県にはほとんど企業がないという印象でした。そんな中で、ちゃんと調べてみるとこんなおもしろい会社があると知り、応募しました。

入社してみて、木材に対する見方が完全に変わりました。それまでは、鉄筋コンクリートが木材よりも圧倒的に丈夫で耐震性・耐火性にも優れていると思い込んでいましたが、今やそれがどんどん変わりつつある。今までなぜこんなことを知らなかったのかと、損をしていたように感じています。

こういう話をすると、異業種で働く友人たちもとても興味を持って聞いてくれます。知れば知るほど会社としての将来性が広がり、魅力的な会社だと実感しています。現在、社員は約80名。20歳代が約20名います。

人事課で採用活動に当たっていますが、環境問題への取り組みの評価が高まっていることを実感しています。これから伸びていく企業としてもっとアピールしていきたいし、三重県にもこんな会社があることを、もっと多くの人に知ってもらうため、SNSなどを使って発信し始めています。

 

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