荏原製作所 - 大切なのは目に見えない多様性 ~全社員が活躍できるデータドリブン・ダイバーシティの実現を目指して~

荏原製作所は、1912年に畠山一清氏が創業したゐのくち式機械事務所をルーツにもつ。創業の精神である「熱と誠」を礎にし、創業から110年以上たった今でも事業を通して社会課題の解決に取り組み続ける。

現在は主力製品であるポンプを軸とし、コンプレッサ・タービン等の風水力機械や、環境プラントの設計・運営、半導体の製造装置・機器などの産業機械を手掛け、世界トップクラスの高い技術力を持つ。

多様性を尊重 社員の秘めた能力を最大限発揮

長期ビジョン「E-Vision2030」において「競争し、挑戦する企業風土を具現化する、多様な社員が働きがいと働きやすさを感じて、活躍できる企業グループとする」ことを掲げている。

同社は社員一人ひとりが持っている背景や、本来秘めているスキルなどのタスクダイバーシティ(目に見えない多様性)でイノベーションを起こすことができる世界の実現を目指す。また、多様な性を尊重するために、制度の設計や多目的トイレの設置など環境面での整備も進める。

同社は国内の婚姻の平等(同性婚の法制化)を推進する「Business for Marriage(以下BME)」へ賛同を表明した。

BMEは、2020年11月に発足した公益社団法人Marriage For All Japan -結婚の自由を全ての人に(MFAJ)と、NPO法人LGBTとアライのための法律家ネットワーク(LLAN)、認定NPO法人 虹色ダイバーシティの3団体による共同プロジェクトだ。2023年5月10日自伝で、381の企業・団体が、婚姻の平等(同性婚の法制化)への賛同を表明している。

ダイバーシティプロジェクトから見える未来

性別や国籍などデモグラフィックダイバーシティ(目に見える多様性)だけではなく、経験や職種などのタスクダイバーシティ(目に見えない多様性)までインクルージョンを行うことが、企業の成長だけではなく、社員それぞれの成長にも必要不可欠と考え、2022年1月に社長直轄のダイバーシティプロジェクトを発足し、同年7月に専任組織化した。同社内の7名が中心となってその活動を推進している。

多様性を促進するためには、社内の心理的安全性が担保されている環境が必要だ。その環境面について、同社は制度設計などに加えて、新しい時代に向けたユニークなプロジェクトに取り組んでいる。

その1つが、メタバース空間の構築だ。さらにコミュニケーションをアバターになって行うことでメタバースとダイバーシティの融合を試みる。メタバース上においては、人の見た目や職位などのバイアスに左右されず、純粋に発言内容だけで判断ができるようになる。つまり心理的安全性を自然につくることができ、公平なコミュニケーションが可能になるという。

内定式やインターンなど、主に採用活動においてその環境を実装するため、試験的にそのプログラムを進めている。

プロジェクトメンバー内のユニークさの一つとして、お互いをイングリッシュネームで呼び合う文化があるという。同社社長である浅見さんは「マイク」と呼ばれているそうだ。あえて敬称や役職の無いイングリッシュネームを使うことでメンバー同士の心理的な距離を近づけた。

また、前職から中途入社でプロジェクトに参加したメンバーもいる。「ダイバーシティプロジェクトに関心があり、面接を受けた。ダイバーシティへの想いを強く持っているメンバーが多く、企業が本気で変化していこうという熱量を感じている。今まで自分は、自身の考えを抑えることが当たり前になっていたが、入社してからは自分らしさをもって自由に働くことができている。それができているのもそういう環境があるからであり、とても素晴らしいことだと感じ、周囲に感謝している」企業の変化は、社員一人ひとりが自分らしく働けること、それを可能とする環境から生まれるのかもしれない。

「データドリブン・ダイバーシティ」を目指す

同社のこれからの取り組みとして、適材適所が大きなテーマとしてあるそうだ。例えば、社員個人の適性が不明瞭なまま人員配置されるケースがあったが、同社では人材のパーソナリティやスキルなどをデータでレギュレーションした上で、職種とマッチングするような方向性を考えている。

また、2022年7月にダイバーシティープロジェクトと同時に立ち上がった社長直轄のデータストラテジーチームでは、性格などの人間の内面もデータ化し、お互いの理解を進めていくことで社員個人の良さが生きるようにしていきたいという。そして個人の適性と仕事内容のミスマッチを防ぐことで、個人のパフォーマンスを最大限に発揮できる環境を目指し、「データドリブン・ダイバーシティ」の構築に向かい企業全体で取り組んでいく。

企業の変革を促すためには多様な人材登用(タスクダイバーシティ)が重要だ。多様な人材がライフイベントを通して安心して働くことができ、自分の望むキャリアを継続できる会社にすることで、E-Vision2030のマテリアリティで掲げる「人材の活躍推進」の実現を加速し、企業価値のさらなる向上を図る。

荏原グループは、長期ビジョンと中期経営計画に基づいてESG重要課題に取り組む。持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指し、2030年にCO2を約一億トン相当の温室ガスを削減、さらに世界で6億人に水を届けることなどを設定し、企業価値のさらなる向上を目指す。

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