企業の存在意義(パーパス)や社会的価値への貢献を重視した経営(パーパス経営)をおこなっている企業を紹介する特別企画

パナソニックITS 株式会社|パーパスに込められた想いが人と企業に情熱を灯す ~モビリティ技術の可能性を追求し、笑顔あふれる社会を実現する~

パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社のグループ会社で、ソフトウェアとハードウェアの設計開発を担うパナソニックITS株式会社 は、2000年4月に設立された。「人と社会をつなぐ」という経営スローガンのもと、新たな技術、新たな未来をつくるために、挑み、楽しみながら、情熱をもってチャレンジを続けている知的創造集団だ。

代表取締役社長 田辺さん

同社は2022年3月に「モビリティ技術ですべての人を笑顔にする」というパーパスを発表した。田辺代表取締役社長のもと策定を一任されたのは、飯島専務取締役、40代の管理職を中心とする10名のチーム。

社内の一人ひとりが心から共感し、胸を張って社会に発信できるパーパスの策定を目指した。同社のパーパスは実装段階に入り、事業を広げるための大きな原動力となっている。飯島専務取締役、パーパス策定チームリーダーの寺本さん、同メンバーの金丸さん、藤原さんに、お話をうかがった。

管理職を中心にパーパス策定チームを結成

専務取締役 飯島さん

――パナソニックITSの「パーパス」策定の背景やきっかけを教えてください。

飯島専務 当社はパナソニックグループで唯一、車載製品の設計・開発を専門に行う会社です。事業会社であるパナソニック オートモーティブシステムズ株式会社(以降、PAS)が、お客さまから受注した車載製品を設計・開発するため、私たちはPASの「競争優位性の源泉になる」ということを、自社のパーパスとして掲げてきました。

PASとの一体開発はあって当たり前なのですが、このパーパスからは、どこか下請け的な姿勢も感じられます。企業グループの枠組みに安住して、いつの間にか会社全体が受け身マインドになってしまっていたのかもしれない。それでは自分たちの可能性に自らキャップをはめるようなものです。

2016年に経営トップが田辺社長に変わり、人を中心とした会社にしようと、トップダウンで色々な施策に取り組みました。それがターニングポイントとなり、若い社員がどんどん入社し、会社自体もみるみる元気になっていきました。このタイミングで、我々のパーパスとは本当は何なのか、改めて考えてみようということになったんです。

パナソニック創業者である松下幸之助氏は、人財育成の位置付けを「物をつくる前に人をつくる」という言葉で示しました。田辺代表取締役社長 自ら人財育成の一環として大学生、高校生へ講義を行っています。

――パーパスを策定するにあたって、どんな想いを持っていましたか。

飯島専務 パーパスは、社会に対しての存在意義を、社内と社外、すべてのステークホルダーに向けて発信するもの。だからこそ「私たちはこういう価値を社会に提供します」と、社員一人ひとりが胸を張って言えるものにしたかったんです。それは同時に「自分たちには、このパーパスを実現する力があるんだ」と社員が自覚し、自信や誇りを持つことにもつながります。

――パーパスの策定は、誰がどのような形で行ったのですか。

飯島専務 最初はとても迷ったんですよ。一般社員の意見を集約するボトムアップでいくべきか、管理職層が決めて全社に浸透させる、いわゆるトップダウンがいいのかと。

最終的に選んだのはトップダウン方式でした。会社の大切な未来のこと、目指すべき方向性は、会社をよく理解している人間が責任をもって考えるべきだという考えが強くあったからです。タスクフォースは40代の管理職を中心にメンバーを構成し、パーパスの策定を任せることにしました。

左から、藤原さん、金丸さん、寺本さん

――パーパス策定を委任された皆さんは、どのように思われましたか?

寺本さん 2021年の夏頃に飯島専務から任命を受けました。すぐに40代の部長たちに声をかけ、10名でパーパス策定チームを立ち上げたんです。私は開発センターで技術1部の部長を担当していますが、ちょうど部長たちの間でも自分たちにしかない、自主性のあるパーパスが必要だと話していた時期だったので、結果的にスピード感をもってプロジェクトがスタートできたと思います。

金丸さん 私は現在グローバル開発センターでセンター長を担当しています。以前、海外赴任をしていたころ、アメリカで勤務していた時期がありました。そこで見たのは、パーパスを掲げ、社会に対して力強く存在意義を発信する多くの企業でした。社員の皆さんが「自分たちの存在意義はなんだろう」と考え始めたタイミングで、これから会社を引っ張っていく責任者層がパーパスを考えるというのは、会社の将来にとって変わるためのチャンスだと思いました。

藤原さん 私は人事部に所属しています。ほかのメンバーより少し世代が下なのですが、ありがたいことに仕事をするなかでブランドスローガンのような “形のないもの”をつくる機会がとても多かったんです。パーパス策定チームの中では、メンバーが考えたことを、社員に寄り添う形で提示する、いわば間をつなぐ役割として、声をかけていただきました。

――具体的な策定プロセスはどのようなものでしたか。

寺本さん チーム立ち上げは2021年の8月だったのですが、パーパスとは何なのか、まず私たち自身が理解するところから始めなくてはならず、最初の1カ月は学習と情報収集に没頭しました。次の1 カ月は、自分たちを取り巻く現状の把握にあてました。新しいパーパスの位置づけを考えるために、会社が掲げるほかのパワーワードの意味や背景を調べ直し、体系的に整理する必要があったからです。

その後、今から10年後、25年後の世の中はどうなっているかを想定して、そのとき会社はどうあるべきか、私たちはどうありたいのかを、仕事、環境、顧客、ライフスタイルと、あらゆる面から考えていきました。

藤原さん そうしていく過程で、メンバーの一人ひとりが、自身が大切にしている「価値観」や「願い」、「夢」、「理想」などの言葉が、出てきたんです。この作業には3カ月ほどかかっています。

金丸さん たくさんの言葉のなかから、みんなが共感できるものを拾い出す作業は大変でしたよね。でも話し合い自体はものすごくおもしろかったです。

――集まったたくさんのキーワードを元に、まずはパーパスに付随する「Story」を、藤原さんが文章化したわけですね。

藤原さん はい。「Story」というのは、パーパスに込めた想いを伝える文章で、メンバーがもっとも共感する要素が、全部詰まっています。文中では、仕事に対する姿勢、こうありたいと願う姿、それを実現する働き方などを網羅して、最後に「私たちと関わるすべての人を、技術の力でハッピーにする」と結びました。

この文章さえあれば、私たちが話し合ってきたすべてがわかります。それを心に響く形で伝えるために、構成から細かな語句の選択まで、試行錯誤を繰り返しましたね。知見を活かしつつメンバーにも見てもらい、何度も手を入れなおしました。できあがった「Story」は、すべての文字に意味がこもっています。一人ひとりの社員が、誇らしいと思えるものにしたかったのです。

パーパスの「自分ごと化」を全社で推進

――パーパス自体の策定はスムーズに進みましたか。

金丸さん 実はパーパスは最初2本作ったんです。社会に向けたものと、社員に向けたものと。それを最終的に一本にまとめたのですが、その過程も大変でしたよね。

寺本さん 策定までは本当に大変でしたよ。「モビリティ技術ですべての人を笑顔にする」というパーパスのなかで、「笑顔にする」という部分は、わりと早く決まったんです。しかし、その「笑顔」にしたい人が誰なのか、その点に絞ってメンバーで深掘り、考える過程がありました。パーパスの冒頭も「モビリティ技術」でいくのか、もっと広い「技術」というスコープでとらえるべきかで、だいぶ頭を悩ませました。

藤原さん 多少手間はかかっても、結果的に最初に社外用と社内用を作ってみて、よかったなと。初めて見てくださる外部の方にもわかりやすく、社員にとっても手触り感がありつつも目線を上げてくれるような内容に仕上がったかなと思っています。

金丸さん その他に、英語版のパーパスも作りました。日本の事業所にも外国人社員がたくさんいますし、ゆくゆくは会社をもっとグローバルに成長させていきたいので、英語での情報共有は不可欠です。ただ、英語でパーパスを作っても、日本語と同じメッセージが正確に伝わらなければ意味がない。伝わりやすい内容にするため、アメリカ人の同僚に英語版を見てもらい、微調整を重ねて完成させました。

――できあがったパーパスをご覧になって、飯島専務はどう感じましたか?

飯島専務 グループ会社間の関係性は、新しいパーパスでは完全に影をひそめ、情熱的で明るく、ポジティブなパナソニックITSの姿がそこにありました。社外の反応も上々で、策定されたパーパスを通じて、社会に自社の存在意義を堂々と発信していく姿勢は、協力会社や取引会社に好感をもって迎えられました。共感の声も多くて嬉しかったですね。

一方、社員は少なくとも最初、「なに、また新しいのが出たの?」という感覚があっただろうと思います。なにしろ当社には、「経営スローガン」に、もともとの「存在意義」に、「目指すべき組織風土」に、「行動指針」と、パワーワードがたくさんありますから(笑)。

そんななか、どうすれば「自分ごと」として、みんなにパーパスを受け入れてもらえるのか。そこが一番大事だと思い、早い段階から策定チームともよく話をしていました。

――パーパスの「自分ごと化」を進める、具体策はありましたか?

飯島専務 1カ月に1~2度は、Story(パーパスに込めた想い)を含むパーパスの全文を、全社員が集まる総合朝会の場で私自身が読み上げています。また部や課のミーティングでも、「パーパスを自分ごととして落とし込む」とはどういうことなのか、意見交換をしてもらいました。

寺本さん パーパス策定後、まず部長、続いて課長のみなさんに、「自分ごとワークショップ」を受けてもらいました。その後は課長たちがファシリテーターとなって、学んだことをチームメンバーに伝え、会社全体で、パーパスの「自分ごと化」に取り組みました。

パーパスがしっかりと設計され、思いを込めて作られていることが伝わるよう、私たちでメイキングムービーを作り、社員のみなさんに見てもらうということもしましたね。

藤原さん ぼくが思う「自分ごと」というのは、パーパスや、パーパスをめぐる「Story」のどこか1カ所でも、個人として共感できることです。ワークショップでは、自分は何をしているときが楽しいか、何に対して怒りを感じるかなど「個人」の感情や考え方に、時間をかけて突き詰めました。徹底的に自分と向き合い、自分の存在意義に思いを馳せ、改めてパーパスを読んでみる。そのプロセスを踏むことで、初めてパーパスを個人に引き付け、考えられるようになるのだと思っています。

発見、共鳴を経て、パーパス実装のフェーズへ

――パーパス策定から1年、社員のみなさんの意識や行動にどんな変化を感じましたか。

飯島専務 社員が積極的に社会に向けて発信する場面が、すごく増えました。以前はPASから入ってくる仕事を受ける一方だったのが、今は自分たちから主体的にお客さまの元に出向き、直接話をすることも多くなったんです。自ら市場を分析し、エンドユーザーが求めるものを考えて、積極的に提案するようになったというのが、意識と行動の大きな変化だと思っています。

開発した商品の品質や研究成果が表彰されるなど、社会的に称賛される機会が増えたことも新しい変化です。自分たちが積極的に発信すれば、ちゃんとそれを見ていてくださる方がいて、しっかりフィードバックが返ってくる。それを反映させた商品を、また社会に提案する。そういう循環がつくれるのだと確信できたことが、みんなの自信につながっています。

――御社はすでに、「モビリティ技術ですべての人を笑顔にする」このパーパスを実行する段階に入ったと伺っています。

飯島専務 地方創生におけるMaaS(Mobility as a Service)事業がそのひとつです。まさにパーパスが示すとおり、私たちが得意とするモビリティ技術を使って、人々を笑顔にする事業例です。MaaSのニーズは日本中にありますから、これからどんどん展開していきたい。一緒にやってくれる若い力に期待します。

――新しいパーパスのもと、パナソニックITSは、どんな未来を作っていきたいですか?

飯島専務 私たちが目指すのは、経営スローガンにあるように、「社会と人をつなぐこと」です。それをもう少し自分たちに引き付けたのが、「モビリティ技術ですべての人を笑顔にする」というパーパスです。

「移動(モビリティ)」って、ポテンシャルがすごくあるんですよ。私たちは移動することで、知らない場所へ行き、知らない人とつながることができます。そこには新たな出会いがあり、新たな刺激や体験がある。喜び、幸せ、感動、学びの発見、それ自体が人生を輝かせることができるものだと思っています。

そんなふうに、移動を通じて人と人、人と地域がつながり、みんながワクワク笑顔で暮らせる社会。そういう社会を私たちの手で実現したいと、強く願っています。

――パーパスがブーストとなり、可能性はますます広がりますね。ワクワクする現場にどんな仲間に迎えたいですか?

藤原さん 何でもいいので好奇心をもって、やってみようと動ける人。未知の領域でも物おじせず、一歩踏み出す勇気と情熱のある人。夢に向かって努力を惜しまない人。そういう人には、360度からスポットライトが当たる会社ですよ(笑)

金丸さん 何かを変えたい、もっと良くしたいという情熱をもっている人と、一緒に働きたいです。「こんなことをしてみたい」とか、「自分はこうありたい」とか、パーソナルビジョンをもっているといいですね。

寺本さん 私たちは、新しいことをどんどんやってみる。たとえ前例のないことでも、「やろう、やろう!」と集まってくる人がいる。チャレンジ精神に溢れる若い世代は、いつでも大歓迎です。もちろん、本業である車載製品の設計・開発に対する技術はしっかり磨き、そのうえで自分の存在意義を思う存分発揮して輝いてほしいと思います。

飯島専務 当社の社員は、実は業務以外での活動も非常に活発です。例えばアマゾンウェブサービスが主催する「AWS Deep Racer Tokyo」では、世界新記録で優勝し、2023年11月にラスベガスで開催される世界大会に、日本代表として出場します。そういった様々なチャレンジを仲間たちがちゃんと見ていて、努力や成果に惜しみない拍手を送ってくれる。誰かが何か面白いチャレンジをすると、「すごい!」と称賛されるし、「よし、自分も何かやってみよう!」とみんなが触発されます。是非、自ら挑戦を楽しめる人に来ていただきたいと思いますね。

会社概要 – パナソニックITS株式会社 – Panasonic

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