企業の存在意義(パーパス)や社会的価値への貢献を重視した経営(パーパス経営)をおこなっている企業を紹介する特別企画

ヒビノ株式会社|世界に感動を生み出すための創造と革新 ~音と映像から新領域へのチャレンジで強度の高い組織へ~

あなたが最近感動したことは、どんなことでしょうか。旅先で絶景を見たときでしょうか。素敵な映画を観たときでしょうか。

ヒビノ株式会社の発祥は、一人の少年エンジニアの誕生に由来します。創業者日比野宏明氏は1951年、17歳の時に独学で「テレビ受像機」の製造に成功しました。日本のテレビ本放送はまだ開始されておらず、NHKが週に1回試験電波を発信しているのみでした。その試験電波をキャッチし、日比野少年が自作したテレビ受像機は、見たことのない映像を映し出しました。その部屋には近所の人が大勢集まり、初めて見るテレビの映像に驚きを隠せなかったそうです。

設立から60年。同社は、まだ誰も知らない「最高の音と映像」を追求する不屈のチャレンジ精神と共に、いくつもの日本初・世界初を生み出し、常に「感動」を作り続けてきました。創業の精神である経営理念「創造と革新」のもと、感動、貢献、感謝、幸福を満たすビジネスこそを理想として、「音と映像で、世界に感動をクリエイトする」というパーパスを掲げています。

これからの事業成長に向け、どう取り組んでいくのか。代表取締役社長の日比野晃久氏、そして社員の出田(いでた)さん、長谷川さん、杉江さん、中山さんの4名にお話を伺いました。

世界のヒビノを目指して。パーパスが想いを一つにする

2024年11月に、ヒビノは60周年を迎えます。当社は、音響と映像を中心に、販売施工とサービスを組み合わせたビジネスを展開しています。今後は世界へ事業を拡大していくため、その基盤を作るべくM&Aにも力を入れています。2023年にも新たに1社、グループに入り、国内外20社以上を連結子会社とする企業集団となりました。社員数も1500人を超え、グループ規模が急拡大しています。

そこで、「音と映像で、世界に感動をクリエイトする」というパーパスを策定し、企業文化の異なるグループ会社の方向性と、グループ全員の「志」を統一しようと考えました。「感動」を生み出すことを通じて社会に貢献し、感謝をいただくというヒビノグループの商売の意義と、世界を目指すという我々のビジョンをわかりやすく伝えたいという想いも込めています。

「感動をクリエイトする」とは、心が動くような最高の音づくり、画づくりをするということです。まだ、誰も知らない理想の音響、映像に向かって挑戦し続ける。大変なことですが、パーパスを策定したことによって視座が高まり、海外で活躍したいという希望者も出てきました。皆さんには、「世界トップを目指す」という目標を大切に、是非チャレンジをしていただきたいと考えています。

感動を作るプロフェッショナルを目指せる環境

我々の事業は大きく分けて、3つのセグメントで構成されています。

一つ目は音響・映像機器の販売や、そのシステムを設計・施工して、メンテナンスまでを手掛ける販売施工事業です。2つ目は、建築音響施工事業。音空間の設計・施工や、騒音に対する対策など、社会のよりよい音環境づくりに取り組んでいます。最後はコンサート・イベントのサービス事業です。音響・映像システムを企画し、機材のレンタルとオペレーションを提供しています。

我々のお客様の中には、業界でも一流と呼ばれる音楽プロデューサーや演出家、設計・デザイン会社など、前例がないようなプロジェクトにチャレンジされる方が多くいらっしゃる。当社の社員はその方たちのチャレンジに伴走し、難易度の高い現場、大規模な現場で揉まれながら、一流の人材へと成長していきます。苦労もありますが、この上ない喜びと達成感を味わうことが出来る。その達成感が仕事への活力に代わっていく、好循環の中に身を置けることも魅力です。

当社の社員に、アメリカの音楽界で最高の栄誉といわれる、グラミー賞を受賞したレコーディングエンジニアがいます。彼はヒビノサウンド Div.というコンサートの音響をサポートする部門に所属し、日本人エンジニアとして、初の快挙となる最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞を2002年に受賞しました。多数のコンサートのライブレコーティングを行い、国内外で高い評価を得ています。当社には業界トップクラスの人材が集まっています。そのようなスタッフと一緒に働くことができるということは、最高の学びの機会になるのではないでしょうか。

変化に強い組織へ。新領域への挑戦

「ハニカム構造」をご存じでしょうか。蜂の巣のように、正六角形が隙間なく並んだ構造をいい、軽くて強度がある構造体です。最大の特徴は衝撃吸収です。私はその構造をもとに、「ハニカム型経営」を考案しました。それぞれの正六角形は「事業」です。オンリーワンの技術やナンバーワンのビジネスモデルを持った、特色のある事業が集結し、有機的に連携することで成長を実現できる。ハニカム型経営は、我々がこれからの事業成長をしていくために必要な、外部環境の変化に強い事業構造を構築します。

一つのコア事業が、強い経営基盤となっている会社がたくさんあります。もしもコア事業が傾けば、それと共に業績も悪化してしまいます。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、コンサート・イベントが開催できない状況になり、我々のサービス事業は大きな打撃を受けました。その一方でフル稼働した事業もあり、ハニカム型経営が真価を発揮しました。今後はハニカム型経営を進化させ、これまでとはまったく異なる「新領域」の事業にも挑戦し、より多角的に拡大していきたいと考えています。

具体的には、バーチャルプロダクション、三次元LED技術、騒音対策、ものづくり、グローバル展開など、多様なテーマで新しいビジネス領域を開拓しています。

他社に先駆けて取り組んできたバーチャルプロダクション事業は、ドラマやCM、ミュージックビデオなど多くの撮影実績を重ねてきました。バーチャルプロダクションとは、バーチャル技術とLEDシステムを活用した新たな映像制手法のことです。LEDディスプレイに背景となる仮想空間を映し出し、手前にリアルな人物や美術を置いて撮影を行います。当社は、この技術に必要な映像機材の多くを元より保有・運用していました。コンサート・イベントで培った知見は、他社にない強みだと思います。最近では、NHKで放送されていた大河ドラマの撮影をサポートさせていただきました。日本のバーチャルプロダクションリーダーとして業界をけん引していきます。

この春には、日本初となる三次元LED技術を活用した3D空間表現サービスを開始します。2023年8月、アメリカLiminal Space社との資本業務提携を通じて、三次元LED技術の運用に関する技術ライセンスを獲得し、これまでの立体映像とは一線を画す3D空間が提供できるようになりました。コンサート・イベントをはじめ、テーマパークや博覧会のパビリオンなど、さまざまな場で使用される見込みです。アーティストも、観客の皆様も、我々も、今までにないまったく新しいエンターテインメント体験をすることになると確信しています。

これまでとは逆の発想で、騒音対策事業にも取り組んでいます。我々は「良い音を作る」ことで社会に貢献してきましたが、「良くない音を消す」事業で価値を創出したいと考えています。都市への人口集中や、生活様式の大きな変化に伴い、騒音対策や防音の重要性が高まりつつあります。特に近年では、デジタルインフラ整備の一環として全国各地で建設が進むデータセンターの騒音対策や電磁波セキュリティのニーズが高まりました。当社グループが持つ音や振動、建築音響の技術で、時代の要請に応える、社会課題解決に即した事業でもあります。

音と映像の感動を原動力に

世の中が変化する中で、新しいものが求められている。我々は、そこに応え続けてきました。これからも音響や映像の世界は常に進化していくでしょう。その中で、我々は何ができるのかを考え、常に先駆けてチャレンジしていかなければなりません。我々が手掛けた街頭ビジョンに、新宿のラウンドLEDディスプレイで映し出される猫の立体映像があります。見た人は驚きや楽しさを感じると思います。自身の仕事の先に感動が生まれることが我々の最高の喜びであり、次のチャレンジへの大きな原動力でもあるのです。

これから我々は、地球規模で事業を展開していきます。売り上げというのは、その目標に対して実直に取り組む中でついてくると考えています。世界70億人のマーケットへ向け、音と映像で感動をクリエイトするビジネスで挑戦を続けていきます。

【社員4名インタビュー】

出田 猶貴(いでた みちたか)さん
ヒビノマーケティングDiv. システムソリューション営業部 ソリューションチーム。
2017年新卒入社。技術営業を担当
音響システムのプランニングから施工・メンテンナンスまで、幅広い提案を行っている

長谷川 諒(はせがわ りょう)さん
ヒビノクロマテックDiv. 技術部 技術課
2022年新卒入社。LEDディスプレイ・システムの常設ビジョンやデジタルサイネージの設計、施工を担当。
直近では、東京ドームシティのLEDビジョンの導入に携わった。

杉江 宏紀(すぎえ ひろのり)さん
ヒビノサウンドDiv. 東京ブランチ PA課
2014年中途入社。コンサートやイベント会場の音響システムを担当。

中山 絵里香(なかやま えりか)さん
ヒビノビジュアルDiv. Live Entertainment Creative Unit2
2017年中途入社。コンサート会場の大型LEDディスプレイの設置、映像送出を担当。機材の準備から搬入・設置、本番の操作、撤去までを行う。

―― 皆さんがご入社されたきっかけを教えてください。

中山 もともと音楽に興味関心が大きかったこともあり、コンサートの映像演出に興味を持ちました。当社であれば確実にスキルアップができると考え、入社することを決めました。最前線となる現場で活躍をされているたくさんの先輩方がいらっしゃる中で、専門性の高い知識と技術を学んでいます。私もその方々のように、後輩に対してきちんと仕事を見せていけるような人材になっていきたいと考えています。

出田 私は大学で音響を専攻していました。その頃から音響機材を組み合わせてシステムを考えることが好きだったので、音響関連サークルにも所属していました。学園祭のイベントの機材の割り振りや、システム設計などをしていたこともあり、当社なら好きなことで自分の経験が活かせるのではないかと考えたことが入社のきっかけです。同じ業務用音響の業界に、大学の友人がたくさん所属していることもあり、いずれは一緒に大きな仕事ができたらという夢を持っています。

長谷川 私はコンサートやライブが好きなこともあり、映像演出に興味を持ったことがLED業界を知るきっかけとなりました。街中にあるLEDを使ったビジョンはどういう企業が関わっているのかを調べるなどしていました。そこでLEDディスプレイメーカーの当社ならば、空間の映像演出に関わるさまざまな仕事に携われると考え、入社しました。

杉江 私が同業他社で働いていた頃、ヒビノのPAエンジニアの方々とのたくさんの出会いが、入社のきっかけだったかもしれません。仕事に対して情熱をもって、一生懸命に取り組んでいらっしゃる方ばかりだったことを覚えています。私が前職でまだ駆け出しの頃、ヒビノが音響を担当する音楽イベントに、乗り込み(特定のアーティストに帯同して、その出演時のみ現地の機材をオペレートすること)する機会がありました。慣れない機材でうまく行かないときも、親身になって教えてくれ、1つ聞くと10返ってくる現場でした。キャリアを重ねる中で、次のステップを考えたときに、ふとその方々を思い出したんです。業界で最も人材力を感じた会社でした。自分もその方々と一緒に働いて成長していきたいと考え、ヒビノへの入社を決めました。

―― クライアントの想いを形にするために、どんなことに注力しながら仕事を進めていますか。

長谷川 私たちのお客様は建築会社様が中心です。デジタルサイネージをお納めする企業様との間に、建築会社様のコンサルティングという立場で入らせていただきます。施工に関わるさまざまなヒアリングを行い、丁寧なコミュニケーションを取りながら業務を進めていきます。LEDディスプレイの分野はニッチなので、規模の大きい建築会社様でも馴染みがない場合もあります。私たちは、「そもそもLEDとはどのようなものなのか」というところから説明をし、ご理解いただけるように努めています。施工がスムーズに進むように、細心の注意を払っています。

出田 私達は、業務用音響機器、音響・映像システムを商業施設や音楽ホール、競技場など、さまざまなシチュエーションに合わせて販売しているチームです。主力商材は、世界中から選りすぐった輸入商品で、音響機材に関する70ブランドのうち約7割を私の部署で取り扱っています。マルチベンダーならではのシステム構築力で、音の入口から出口まで、一貫してご提案できる強みがあります。
予算やクオリティ、使い方などさまざまな角度からアプローチし、お客様が望んだ形でお納めすること。これが私の仕事のゴールです。その際にお客様に感謝をいただけることが、やりがいにつながっています。

中山 近年はコンサートのショーアップ化が進んでいて、ステージに大型LEDビジョンを取り入れた演出が増えています。LEDビジョンの設営は力仕事もあり、大変だと思うこともあります。また、機械なので壊れるなどのトラブルに見舞われることもあります。その時は臨機応変にチーム全体で考え、コンサートを開催できる状態にしなければなりません。絶対にライブを止めないために、とっさの判断力と入念な準備が必要です。

杉江 この仕事で重要なことは、お客様、中でもアーティストの方とのコミュニケーションの密度です。音づくりの時、アーティストの方々の多くは抽象的な言葉でオーダーされます。例えば「もう少しふわっと」とか「音を硬く」などです。その言葉に対して「こういう形ですか」など何度も対話と試行錯誤を繰り返しながら理想の音に近づけていきます。アーティストや演者の方々との対話の中に、意外性や驚き、新鮮味などを感じることが多く、そこに仕事の面白さを感じます。

――「音と映像で、世界に感動をクリエイトする」というパーパスは、皆さんの仕事にどう結び付いていますか。

出田 私たちが扱っている商品は、業務用音響機器の中でも放送局やスタジオ、ホール、商業施設、コンサート音響会社などに向けた、音のクオリティが高い機器をご提供しています。お客様にご案内する際も、確実に商品の価値を伝えることに注力しています。感動を作る音響機器というモノを販売することで、お客様の望む形をクリエイトする。感動の下支えとして私たちが存在していますので、そこにパーパスが結びついていると考えています。

長谷川 私のお客様はLEDビジョンを導入される施主様ですが、映像を見るのは、街ゆく人々などそこに訪れる皆様です。あるライブ会場の近くに、自身の担当したビジョンが設置されたことがありました。友人がその前で写真を撮り、SNSにアップしてくれたんです。私が担当したことを後から知ったようで、とても鮮やかで驚きがあったと感想を伝えてくれました。さまざまな方が、自分の担当したビジョンを見た時に、楽しさや驚きを感じてくださる。自分が感動を作ったと思う瞬間です。

杉江 私は、アーティストが音を創り、その音楽を聴いた方々が感動する。その感動を生み出すために、アーティストの最高の音を観客に届けています。パーパスに直結している働き方をしています。アーティストの方々は、自身の世界観を作ることに対して妥協しない方ばかりです。その方々の持っているセンスを表現するところまでサポートでき、自身もプロとして学びながら働くことができます。

中山 私の部署では、コンサートの他にMICEやスポーツイベント、博覧会など幅広いイベントに大型映像を提供しています。どれも、クライアントが望む映像の空間を作り上げることで、感動を作ることが出来ています。ライブに来ているお客様が、映像を見て感動している様子を直に見ることができる。この仕事をやっていて良かったと実感する瞬間です。自分では意識はしていませんが、同時に自分自身もその空間に感動していると思います。パーパスが自身に浸透していると感じています。

――ご自身が仕事を通してチャレンジしてみたいこと、目標をお聞かせください。

中山 私は、男女問わず長く働いていける職場環境を整えていきたいと思っています。今までの新卒入社は男性が多い印象でした。今は、この業界に興味を持って入社してくださる女性の方がとても増えてきていると感じます。技術の進化で機材の軽量化も進んでいるので、体力的にも女性が働きやすい環境に向かっています。今後は、今までのように男性が主となる働き方ではなく、ジェンダーに関わらず平等に活躍できる環境にしていきたいと思います。

杉江 コンサートの開催がパンデミックの影響で少なくなってしまい、必然的に仕事の依頼が少なくなった時期がありました。今はコロナ禍前以上のお仕事をご依頼いただいています。準備や作業が影響して、多くの残業が発生したり、休暇が取れなかったりすることがあります。そういった状況を改善していくために、繁忙期に対応できる業務効率化の実現に向け行動していきたいと考えています。新たな発見や、知識を得ることが出来る環境の中で、これからもつながりを大切にしつつ、飽きることなく仕事をしていけると思います。

長谷川 入社2年目ということもあり、担当している仕事の技術的な部分で、完全に理解が追い付いていないという課題があります。例えば施工に関する業務の中で、細かい部分をプロの業者の方にお任せする場面があります。その際、私が発注している立場にもかかわらず、理解できていないと自覚するときもあります。これからも、現場で得られる知識をこぼさないようにし、幅広い理解を持った人材に成長していきます。

出田 私は仕事を通して、皆の仕事をやりやすくするにはどうすれば良いのかを考えるようになりました。何から始めればいいのかまだ見えていませんが、風通しの良い今の社風を大切にしつつ、効率よく業務が進むような仕組みを作りたいという想いがあります。
さらに、業界全体を巻き込んだ動きにするには、横のつながりが必要だと考えています。コロナの流行前は、音響関係者が集まる飲み会などの交流する場がありました。その場に集まっていた方々はみんな仲が良く、会社を越えたつながりがあったんです。そういった場を復活させたいと思っています。そこからアイデアが生まれ、望む未来を作ることが出来るのではないかと考えています。

 

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