株式会社システム計装|空調機器設備を作る技術ベンチャーが描く、 未来の省エネ世界

空調機器設備を作る技術ベンチャーが描く、
未来の省エネ世界

今回ご紹介するシステム計装の「Eco Keeper(エコ・キーパー)」は、長年のファクトリー・オートメーションで培った高い技術力で、必要な時に必要なだけ電力を消費するシステムを搭載。日本国内をはじめ、韓国、中国、台湾やインドネシアなどで導入事例があり、グローバルな展開を目指している。現存の多くの建物が同社製品を導入すれば、省エネ・省CO2で世界はサステイナブルな世界に歩みを進めることになる。

無駄な消費電力をカットして、コストと環境負荷を低減

当社は1985年創業、従業員8名の小さな会社です。  もともとは家電工場の生産設備、家電リサイクルのファクトリー・オートメーションなどの開発・運用を専門としていましたが、7年ほど前に、工場やオフィスビルなどのセントラル空調における省エネシステム「Eco Keeper(エコ・キーパー)」を開発・発売。現在はこのシリーズが、ファクトリー・オートメーションと並ぶ会社の二本柱といえる存在になっています。

同社の主力製品「Eco Keeper(エコ・キーパー)」

Eco Keeperとはどういう製品なのかを、まず簡単に説明しましょう。
一般的に、工場やオフィスビルなどの使用電力の約40%は、空調機器設備によるものだといわれています。さらに、この空調機器設備で使用される電力のうち約50%が、熱源機器で作り出された冷温水をパイプで施設内に行き渡らせる「ポンプ」を回すために消費されているのです。逆に言えば、このポンプで消費される電力を削減できれば、電力消費量全体を大きく減らすことができるということになります。
そして、ポンプというものは通常、そのとき実際にどれだけ空調を稼働させる必要があるかとは関係なく、常に最高出力で稼働する仕組みになっています。猛暑や極寒の日はともかく、暑さや寒さがそれほどでもない日、また業務上それほど空調が必要ではない時間帯などは、相当に無駄な電力を消費することになってしまうわけです。

そのため、インバータと呼ばれる装置を取り付けることで、ポンプの回転数を必要に応じて調節するというのが、一般的な省エネ対策です。しかし、それだけでは十分ではありません。必要な電力量は、外気温だけではなく建物の中にいる人数などにも影響を受けて、刻々と移り変わっていきます。ところが、インバータにはそのような細かい調整はできず、一律にポンプの回転数を落とすように設定することしかできないからです。

そうした「細かい調整」を可能にするのが、私たちが開発したEco Keeperです。パイプ内の冷温水の温度や水圧を常にセンサーで監視するとともに、外気温や建物の利用人数などのデータを取り込んで分析し、そのとき必要な電力量をほぼリアルタイムで算出。インバータに指示を出し、ポンプの回転数をきめ細かく調整していきます。当社が長年、ファクトリー・オートメーションで培った高い技術力あってこそ実現したシステムです。

すでに、工場やオフィス、旅館など数多くの導入事例があり、中には年間の消費電力量を平均約50%削減できたケースも。これによって、電気料金を節約できるのはもちろん、CO2排出量を大きく削減することにもなるのは言うまでもありません。建物のリニューアル事業において、Eco Keeperを導入してCO2排出量を削減したことで、国や自治体の省エネ補助金の受給が可能になったケースもあります。
つまり、コストの削減のみならず、環境負荷の低減にも大きく貢献する製品なのです。近年は日本国内のみならず、韓国、中国、台湾やインドネシアなど、アジア諸国の工場やホテルなどでの導入事例も増えています。

韓国での展示会パンフレット。同社の情報が記載されている。

「Eco Keeper(エコ・キーパー)」導入後の電力グラフ。

安心を提供できる「提案型企業」を目指して

同様に、使用電力量を調整できるようにすることで省エネを図る製品は他社にもあります。しかし、Eco Keeper の大きな強みは、必要電力予測の精度の高さに加え、導入にあたって大がかりな工事が不要なこと。パイプに穴を空けたりする必要がなく、すでにある空調設備にバイパスのような形で後付けすることができるので、取り付け工事にかかる期間が他社製品に比べ短くて済みます。運用開始後に故障などのトラブルがあったときも、いったん本体から切り離して確認・修理などの作業ができるので、空調そのものは止める必要がないことも大きなメリットだといえるでしょう。
導入にあたっては、まずお客様の状況や要望をお聞きした上で、導入にかかる費用、電気料金やCO2排出量の削減がどのくらい期待できるかなどを明示した「提案書」を作成します。
現在、Eco Keeperは、電力量が一定値以上に上がるとアラームを発する「デマンド監視」、遠隔地でも稼働状況や使用電力量を確認できる「リモートモニタリング」などの機能を付加した上位モデル「Eco Keeper Meister(マイスター)」、小規模な空調設備向けの小型・低価格モデル「Eco Keeper Mini(ミニ)」と、3種類でシリーズ展開しています。そのどれを導入するのがいいのか、どこにどのように取り付けるのかが効果的か……。提案書をもとに話し合いを重ね、納得していただければ導入決定という流れになります。
ただし、空調の規模や事業形態などの関係で、導入していただいてもそれほどお客様にはメリットがないと判断した場合には、あえて導入をおすすめしない場合もあります。ただ単に製品を開発して販売するのではなく、どのようにすればコストや環境負荷低減の面でお客様に満足していただけるのか、安心を提供できるのかを追求し、提案する「提案型企業」でありたいと考えているからです。
現在、当社のお客様はそれほど規模の大きくない企業や事業所が大半です。それも、お客様それぞれの状況や要望に合わせた、きめ細かい対応を提供したいという思いがあるからなのです。

同社の「Eco Keeper Mini(ミニ)」。

技術を通じて、「我慢をしない省エネ」を実現する

7年前、Eco Keeperを発売した当初は、セントラル空調設備における省エネシステムそのものがまだそれほど一般的ではありませんでした。省エネやCO2排出量削減に対する企業の意識も、今ほど高くなかったように思います。Eco Keeperの効果についてご説明しても、「今は特に必要ないから……」と、なかなか興味を持っていただけないこともしばしばでした。
しかし、そこからの7年で、時代は大きく変わりました。企業が気候変動対策など環境問題に取り組むことがよりいっそう強く求められるようになったこともあり、コスト削減だけではなく環境負荷低減の観点からも、省エネはどの企業にとっても喫緊の課題となってきています。2023年春には改正省エネ法の施行も予定されており、さらに高いレベルでの省エネが求められるようになっていくでしょう。
とはいえ、具体的にどのような取り組みを進めていけばいいのか、特に規模の大きくない企業では、まだまだ試行錯誤されている場合も多いようです。
以前、こんなことがありました。商談のためにある会社を訪れたところ、オフィスの中がなんだか寒い。聞いてみたら、「省エネのために」冷暖房を切っているんだ、というのです。とにかく省エネしなくてはならないというので、手っ取り早く「電気を使わない」ことを考えたのですね。
しかし、それでは仕事の効率も上がりませんし、取り組みを長続きさせることも難しいでしょう。また、ホテルやお店などサービス業の現場では、お客様に不便・不快な思いをさせることにもなってしまいます。
電気を使わずに我慢するのではなく、徹底的に無駄を省く。お客様に提供する製品やサービスの質も落とさずに、着実に省エネを実現させていく。確実な技術を通じてそのお手伝いをするのが、私たちの役割だと考えています。

環境負荷低減に向け、いっそう効果的な省エネ製品を目指す

今後の課題としては、まずは今後も高まるであろうニーズにしっかりと対応していくこと。コロナ禍や世界情勢の不安定化を背景に、インバータをはじめ電子部品の調達が困難さを増しています。「導入したい」という要望をお受けしても、すぐには進められないような状況が続いているので、これをどう乗り越えるかが大きな課題です。
さらに長期的には、ポンプだけではなく空調設備全体で省エネを実現できるような仕組みを開発することが目標です。現状でよしとするのではなく、いっそう効果的に省エネを、そして環境負荷削減を進めていけるような製品を提供していくことを目指しています。
長年にわたって培ってきた独自の技術力を生かし、お客様企業のコスト削減、そして社会全体の環境負荷の低減に貢献していくこと。その目標に向かって、挑戦を続けていきたいと思います。

専務取締役 藤原さん

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