「エンターテインメントの総合流通業を実現する」をミッションに掲げる、株式会社ウィナス(東京都豊島区 代表取締役 浜辺拓)。「人々に喜びを提供すること」「人々に感動を与えること」「人々に楽しみを与えること」の3つを同社はエンターテインメントとして定義している。企業や地方、これからの日本が抱える問題・課題をITというツールを使って解決するソリューションビジネスを幅広く展開し、ベストベンチャー100にも15年連続で選出されている。
企業のSDGs推進をサポートする
同社は、少量多品目の訳アリ食品福袋の購入により、フードロス削減に貢献できる通販サイトである「SUKUERU(スクエル)」を昨年より本格始動している。
SUKUERUは一般消費者向けとしてサービスを展開する一方、企業向けのパッケージサービスとしても展開している。導入企業は、“SDGs経営の実現と福利厚生の充実”が可能になるということが当サービスの大きな特徴だ。
パッケージサービスの内容は、1つは常温で保存可能な食品が詰められたフードロス削減食品BOXが月に一度届くこと、そして2つめは食品BOXの導入を題材に導入企業の情報を発信することができるというもの。フードロス削減食品BOXはプラン別にS、M、Lと分かれており、その違いはそれぞれ内容の点数が異なるところにある。また、詰められた食品に関しては、食品メーカーや食品卸から提供された余剰在庫品が主で、様々なお菓子の詰め合わせやレンジで温めてすぐに食べられる食品や飲料が詰め合わせて入っている。
SUKUERUサービスを導入している企業の業種はさまざまだが、特にIT企業はリモートワークが浸透している背景から、勤務する場に集まるということはメンバーにとっても特別な機会となっている。そういった中でお互いに一息つくなどのリフレッシュと、会話のきっかけになることを期待して導入されているケースがある。また保育園といった、勤務場所を離れることが難しい職業の企業に導入されているケースもある。外出が難しい保育士の福利厚生や園児のおやつとして活用されている。保育士が忙しい合間に一息つくことができ、身体の満たされた状態、ウェルビーイングにもつながる。
行政との連携で街づくりにも貢献
フードロス削減を広く広めていくには地域連携が欠かせない。そのためにはまず、地域とさまざまなチャンネルで連携し、その流通先を確保することが必要だ。
同社がある豊島区はSDGs未来都市として、令和3年3月に食品ロス削減推進計画を策定。食品ロス削減を1つの重要な柱として、区民や大学、NPO、民間事業者と連携してその取り組みを進める。同社は、同区内のNPO法人と協業し、豊島区にある4カ所の子ども食堂に食品・菓子・飲料の在庫の一部を届ける活動を行い、食品ロス削減と街づくりにも貢献している。
このサービスを担当している同社取締役の金子さんは次のように話す。「SUKUERUというサービスを通して、SDGsへの取り組みをライトな入口にしていきたい。気づいたらフードロスの削減に貢献できているという、ハードルが高いと思われがちな社会貢献への自然な入り方を目指している」フードロスという言葉がなくなり、フードロス削減が日常の当たり前になるように、同社はこれからもITと共に社会課題解決へと歩みを進める。
人材の人間力の重要性
SUKUERUのシステム開発は、ゼロベースで開始され、4‐5ヵ月の開発期間を経てローンチされた。スピード感があるシステム開発の推進には、同社の社員のスキルはもとより、個人が持つ“人間力”を重要視している。当然、採用の際にも注目する点であり、社員教育に関しても“人間力”に重点を置く。
同社はエンジニアだけではなく、全社員に対して組織のフィロソフィーの観点、そして施策の2軸で社員の教育を進めている。重要なポイントは、“どこに対してどのような価値を提供することができるか”を考えることができる人材に育成することだ。具体的な人物像は、ヒアリング、エンジニアが企画したサービスを展開、それを発信しカタチにして価値を提供する過程の全てを自ら実行できる人材である。
しかし入社したばかりの新入社員は、開発のプレゼンなどに対してなど、まだ経験値などが足りない場合も考えられる。そうしたことを鑑みて、同社の秋に開催される社員旅行について企画を考え、実行する機会を設けている。そうすることで自然と基礎的な考え方が身につく。
また、同社は年に一度、賞金付きのハッカソンイベントを開催。ハッカソンにチャレンジするメンバーを一人ひとり自ら集め、それぞれのチームで開発したアイデアをベースにプロトタイプを作る。それを社内全体にプレゼンし、それが良いプロダクトであると認められれば、今度はビジネスとして成立するかどうかを設計し、改めて役員・経営陣にプレゼンする。
自ら考え、実行する力を社内でもお互いに向上し合う仕組みが同社には機能している。自律自走することができる環境を仕組みとして設けることで、一人ひとりの社員と企業が共に成長していく。同社の強みは能動的に自律自走できるメンバー、そしてそれを活かしきることができる組織の形にある。
提案して終わりではなく、そこから自ら問題解決に取り組み、やり切る行動力が人間力だという。社会の課題はどんなに世の中が進んでも必ず残り続ける。そういった課題を発見し、自分たちがそれに取り組む意義があるかどうかを見極める。同社がそれをやる意味、意義があるのかを常に問い続け、「あらゆる社会課題を解決するため、形ないものを形にする」ことを繰り返しながら、メンバーと共に未来へと舟をこぎ続ける。
ウィナスが目指す未来
さまざまな意見や、必要な失敗を認めることができる働く環境には、創造の源泉が存在する。チャレンジや失敗を許容し、成長につながる組織文化を醸成することで、組織のチーム力が高まり、ウェルビーイングが向上していく。
そしてヒューマンエラーを認識し、その要因を理解しあうコミュニケーションを繰り返すことで、社員の心理的ストレスは下がっていく。特に同社は東京と札幌、さらにフィリピンに拠点があるので、さらにコミュニケーションをしっかり、スムーズにとることが重要であることが理解できる。
「仕事というものは自分一人ではできないことが多い。だからこそ他のメンバーやチームの協力が必要だ。その協力を得るためには、誰のために行動しているかを明確にし、どこを向いて仕事をしているか、自身がどんな行動を取っているかを意識することが重要」と金子さんは真剣さをのぞかせる。同社の強みは、働くメンバーの誠実さや素直さにあるといえよう。
同じ目標を目指すメンバー全員で乗り込んだ舟をこぐ。今の組織の形にこだわらず、こぎ続ける中で変化変容していきながら、未来を目指していくウィナスという船だ。そこには、社会の終わらぬ課題を一つひとつ顕在化させ、解決に導く人たちが乗船している。
ITではないこともこの先手掛けるかもしれない。しかし、メンバーが共に目指す「エンターテインメントの総合流通業を実現する」という北極星を目指し、同社は歩みを一歩ずつ進めていく。