
就活塾に行く必要はありません
一部の学生の間で、「就活塾」と呼ばれるものが流行しています。結論から言うと、そのような場に通う必要はありません。
就活塾の多くは人材紹介会社が運営しており、エントリーシートの書き方や面接対策、グループディスカッション対策など、いわゆる「就活の関門」をどうクリアするかといったテクニックを繰り返し教えています。言い換えれば、表面的に整えられた学生を“仕上げて”、企業に送り出す構造になっています。
最近では、中央大学や立教大学などから、一部の就職エージェントによる悪質な「オワハラ(就活終われハラスメント)」が報告され、ニュースにもなりました。実際に「辞退した場合は金銭を請求される」といった、金銭的な圧力を伴うケースもあったようです。
人材紹介会社は、学生が企業に入社してはじめて報酬が発生するビジネスモデルです。そのため、報酬が得られる企業へ学生を送り込むことが目的となり、学生本人の意思は二の次になりがちです。その人に合うかどうかよりも、「紐づいている企業に合う人材」に育てて送り出す構造とも言えます。
中には「内定保証」をうたい、学生から数十万円を徴収するような業者もあると聞きます。しかし、そこで得られる内定先が、自分に合う企業である可能性はけっして高くありません。就職は本来、お金で買うものではありません。少なくとも、安易にお金を払う価値があるとは言えないでしょう。
就活に関する相談であれば、大学のキャリアセンターや就活サークルなどもあります。専門性には差があるかもしれませんが、相談のしやすさという意味では十分な存在です。
ただし、あなたにとっての「正解」は誰にもわかりません。実際に動きながら学び、自分なりの答えをつくっていくことが大切です。チャレンジし、その都度「何がよかったのか」「何がうまくいかなかったのか」を内省する。この繰り返しこそが、正解に近づく道だと思います。

就活は成長の機会
コスパやタイパが重視される中で、「就活も効率よく済ませたい」と考える人も多いかもしれません。しかし私は、それは少しもったいないと感じます。
就活は、本来とても恵まれた学びの機会です。新卒という立場を活かせば、無料でインターンに参加でき、企業から丁寧な説明を受けることもできます。企業が時間とコストをかけて用意したイベントに参加し、多様な価値観を持つ人と出会うことができるのです。
「こういう会社があって、この会社とこうつながっていて、こうやって社会が成り立っているのか」
そんな発見を、ぜひ面白い、刺激的だと感じてほしいのです。
もし面接で落ちたとしても、「どう伝えればよかったのか」と学びに変えればよいだけです。
まだ数社しか受けていない段階で、「自分はダメだ」と考える必要はありません。
就活はマッチングです。大切なのは、合う会社に出会うこと。そして、合う会社に受かることです。
あなたが落ちたのは、能力が足りないからではなく、単に合わなかっただけです。下を向く必要はありません。必要であれば小さな愚痴をこぼしながらでも、次に進めばいいのです。 企業だって同じです。学生が企業を選ぶように、企業もまた自分たちに合う学生を選んでいます。「合わなかっただけ」のことを、特別な失敗と捉える必要はありません。
タイパ・コスパを否定しているからといって、闇雲に行動することを勧めているわけではありません。「行動しなさい」ではなく、「楽しんでほしい」と思っています。
就活は、異なるバックグラウンドを持つ人たちと出会い、自分の人生で一度きりの新卒の機会を使って、数万社の中から1社を選ぶ舞台です。
もっとワクワクして取り組んでほしい。その方が、学びも成長も大きくなるはずです。

口コミサイトで得た情報の使い方
口コミサイトは、いまや当たり前の情報源です。見ること自体は問題ありませんが、多くの場合、退職者による投稿が中心となるため、ネガティブな内容が多くなりがちです。
結果として、得られる情報のプラスよりもマイナスの影響の方が大きいケースも少なくありません。大切なのは、鵜呑みにしないことです。
もし気になる口コミがあれば、「実際はどうなのか」を企業に直接聞いてみてください。情報が古い可能性もありますし、すでに改善されている場合もあります。
ネガティブな質問をしてはいけないと思う必要はありません。企業側にとっても、きちんと説明できる機会になるため、むしろ歓迎されることも多いです。
就活はマッチングです。学生も企業も、格好をつけず、正直に向き合うことが大切だと思います。
実際に私も登壇させていただいた企業のイベントでは、その企業と他社を比較しながら議論し、最後は学生からの質問にすべて率直に答えていました。その結果、参加した学生の納得感は大きく高まっていました。
学生側も正直であってほしいと思います。
たとえば、他社内定について聞かれた際、隠してしまう人もいますが、その情報は企業にとって重要な判断材料になります。選考のスピード感も把握できますし、他業界を併願しているA君と、業界を絞っているBさんでは、話の切り口や質問も変わるからです。
情報にズレがあると、結果的にミスマッチにつながる可能性もあります。「業界を絞っていないとダメだと思っていたから」「ひけらかしているようで遠慮してしまった」などと、変な気遣いは無用です。企業はあなたを評価するためだけでなく、より適したコミュニケーションを取るために聞いているのです。

就活に傾向と対策が通用しない理由
大学受験では、傾向と対策を徹底して合格を勝ち取った人も多いと思います。しかし、就活ではその方法はあまり通用しません。むしろ、柔軟さを失う原因になりかねません。
企業理解のための情報収集は大切ですが、面接対策のための“答え合わせ”のような情報収集は不要です。過去の質問やワーク内容を集めて準備しても、あまり意味はありません。
なぜなら、企業の求める人物像や採用方針は、毎年変化しているからです。市場環境や事業戦略、経営体制の変化によって、必要な人材は常に変わります。
また近年は、多様性を重視する企業が増えています。同じタイプばかりを採用するのではなく、複数のタイプをバランスよく採用するケースも一般的です。 「自分と全然違うのに通っている人がいる」と感じた場合、それは別の人物タイプとして評価されている可能性もあります。
もちろん、選考には人が関わる以上、多少のブレや相性も存在します。ただし大きく基準から外れることはありません。選考基準がゴルフでいうフェアウェイだとすれば、選考に残っている人はすべてその範囲の中に入っています(その幅は企業によって異なりますが)。
選考基準のばらつきをなくすという理由で、AI面接が主流になるかというと、私はそうはならないと考えています。企業がAIで対応すると、「手を抜いている」と感じる学生もいるでしょうし、納得感も得にくいからです。
さらに、学生の志望動機を高めることは、人でなければできません。面接官の言葉や姿勢、そこで得られる新しい情報が、「こんな会社で働きたい」という気持ちを生むのです。
