「すぐに辞めない」ための就活の考え方。転勤も配属も前向きに捉えられる。

「転職しやすい」という誤解

話題になりやすいから、という側面もありますが、早期離職に関するニュースは、いまも多く見られます。

その背景には、いくつかの要因があります。ひとつは、企業側がポジティブな側面を中心に伝えすぎていることです。よいイメージが先行すると、入社後に「思っていたのと違う」と感じやすくなります。

また、「社風のよさ」だけで企業を選ぶことにも注意が必要です。「人がいい」「風通しがいい」といった要素は魅力のひとつですが、それだけで企業の本質を判断することはできません。

採用活動で接する社員は、いわば“企業の顔”です。実際の組織には多様な人材が存在し、必ずしも同じ環境が広がっているとは限りません。

同様に、給与の高さだけで判断することにも慎重になるべきでしょう。初任給の引き上げが話題になる中で、「価値を生み出す」という仕事の本質が見えにくくなっている側面もあります。本来であれば、仕事を通じて成長実感が高まっていくはずですが、早い段階で「ワークライフバランス」ばかりが語られてしまうケースも見られます。

さらに、「転職は簡単にできる」という認識にも注意が必要です。
このようなCMが多く流れている影響もあるでしょう。転職市場で求めているのは、あくまで経験や実績であり、若さそのものではありません。

企業側が社風や人の魅力、初任給などポジティブな情報を過度に発信している。学生側もそれを鵜呑みにしていて、転職がありきのように勘違いをしている。そして社会の風潮的にもにも、「頑張らなくて大丈夫」的なことを発信している。いろいろなことが組み合わさっての現状です。

だからこそ、社風や待遇といった要素に加えて、「どんな事業をしているのか」「どんな価値を提供しているのか」といった本質的な部分にも目を向けることが重要です。

仕事とは、誰かの課題を解決し、価値を提供することです。その内容に共感や納得感が持てないままでは、長く続けることは難しいでしょう。

ギャップは必ずある。それにどう向き合うか。

学生の段階で、企業の将来性や戦略を完全に理解することは簡単ではありません。ただし、その企業で働く人を知ることで、組織の方向性や価値観はある程度見えてきます。たとえば、複数の社員と接点を持ち、共通する考え方や価値観を感じ取ることができれば、それが企業理解の軸になります。

インターンシップや説明会も、「雰囲気を見る場」にとどめるのではなく、
・どんな価値を提供しているのか
・自分はどんな仕事を担うのか
を具体的にイメージする機会として活用することが大切です。

それでも、入社後のギャップをゼロにすることはできません。ただし、そのギャップを許容できるレベルまで小さくすることは可能です。

新しい環境に適応するには、ある程度の時間と忍耐も必要です。もちろん、ハラスメントなどの問題は別ですが、軽微な違和感だけで判断してしまうのは、長期的に見てもったいない選択になることもあります。

自分のやりたいことがわからないから、若いうちにいろいろな会社で、いろいろな経験したいと思う人もいるかもしれません。それでも最初の会社で5年と決めて、勤め上げてほしいと思っています。社内にはいろいろな仕事がありますし、上司になる人もいろいろなタイプがいます。「何か合わない」という理由だけで転職を選ぶのではなく、周囲に相談してみましょう。

キャリアの初期段階では、まず一定期間やり切ることによって、見えてくるものがあります。経験やスキルは、継続の中でこそ蓄積されていきます。

新卒1社目が持つ意味

第二新卒は一般的に3年目以内のことと指していて、それが一種のブランド化しているため、若手の転職が増えている要因にもなっています。

もともと、この「第二新卒」は、後発のリクルーティング会社が、新卒と中途の間の層のマーケットをつくるために新しく使った言葉です。狙いとしては中途と新卒のいいとこ取り。一方で、中途半端とも言えるかもしれません。1社目に染まりきってないから新卒に近いピュアさはメリットになりますが、「専門性がない、忍耐力がない」と受け取る企業があることも事実です。

働き方の選択肢が広がる中で、フリーランスや起業を選ぶ人も増えています。ただ、企業で働くという選択をするのであれば、その環境を成長の場として活用するという考え方も大切です。企業は、経験を積むための“舞台”でもあります。

業界理解やビジネスの基礎、人との関わり方など、多くのことを実践の中で学ぶことができます。独立や起業など将来的に別の道を選ぶ場合でも、その経験は大きな財産になります。

配属と転勤の捉え方

早期退職の理由として「希望していた配属先が違うから」というものもあるかもしれません。「配属ガチャ」という言葉もありましたね。一般的には、内定式から入社までにアンケートを取って、入社式のころには決まるケースが多いです。

現在は配属先確定の採用職種もあるので、配属勤務地と初期配属を約束するという内定の出し方をしている企業もあります。ただ不思議ですが、そのコースよりも、いわゆるオープンコース、配属先がわからないコースの方のエントリーが多かったりするようです。

また「転勤」を嫌がる人も多いかもしれません。ただ、それをネガティブに捉えるだけでなく、視野を広げる機会と考えることもできます。一人暮らしも、人間関係もゼロからつくる経験もできます。そして、地方でどんなことが行われていて、どんな困りごとがあるのかを手触り感を持って理解することができます。

転勤はいわば「国内留学」です。もちろん、家庭の事情など個別の事情は考慮されるべきですが、選択肢のひとつとして前向きに捉えてみる価値はあるでしょう。

いずれにしても、配属や転勤に前向きになれるかどうかは、社風ではなく、その企業がどんな価値を社会に提供しているかに共感できているかにかかっています。


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