株式会社ポーラ・オルビスホールディングス|個を認め合い、誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指す2つの取り組み

がんに罹患したことをきっかけに、これまで見落とされがちだった病気と向き合う方々の「美しくありたい」想いに着目。ビューティーで「誰1人取り残さない」ソーシャルグッドな社会の実現を目指し、その人らしく生きるサポートを行っている。

社内ベンチャーで「誰1人取り残さない社会」を目指す

ポーラ・オルビスホールディングスには、組織の壁を越えて個人の意志で挑戦できる機会が数多くあります。例えば次世代リーダー育成プログラムや、グループ内の希望会社・部署への異動にチャレンジできるFA制度、新規事業を従業員から公募するベンチャー制度など、個々の意志や意欲に応える環境が整備されています。

2020年5月に私たちが立ち上げた「株式会社encyclo(エンサイクロ)」も、この社内ベンチャー制度で立ち上げた新会社です。私、水田のがん闘病経験をもとに、がんサバイバー向けのビューティー事業に取り組んでいます。これまで見落とされがちだった、病気と向き合う方々の「美しくありたい」想いに着目し、メディカルシーン(医療)と、ビューティーニーズ(美容)の橋渡しをする商材の開発・販売を行っています。

一般的に「ビューティー」というと、おしゃれや化粧、美容が浮かぶと思います。がんになる以前は、私も企画開発部門でそういった美を追究していましたが、病気になり、自分がいかに限られた人に向けた提案しかしていなかったかに気がつきました。

がん経験者の中には、ケアのためにビューティーを諦めている方も多くいます。そうした方々の〝アンメット・ビューティー・ニーズ〞(=まだ叶えられていない美しくありたい想い)に応えていくことこそ、長年ポーラでビューティーに関わり、がんを経験した私にできるミッションだと考えています。

今まで見過ごされてきたすべての美しくありたいニーズに応えていくことは、SDGsが掲げる「誰1人取り残さない社会の実現」と同じ方向を目指しています。

医療用弾性ストッキング「MAEÉ」は、水田をはじめリンパ浮腫に向き合う
多くの人の声を生かした商品。気持ちや行動を「前へ」進めるきっかけに、
という想いが込められている

経験者の視点を活かした美とケアを両立させる商品

いまや日本人の2人に1人が、いつかはがんに罹患するといわれています。そのうち3人に1人は就労可能な年齢で、職場復帰や働きながら治療を継続するケースも増えてきました。

負担の少ない治療法や治療薬が進歩し、がんの治療を受けながら働き続けることは当たり前になってきましたが、がんのアピアランスケアや職場復帰後の心のケアはまだまだ不十分です。

私自身、自分がリンパ浮腫とつきあうことになってからはじめて、見た目が不自然な弾性ストッキングを使うしかないという現実に向き合いました。リンパ浮腫は、がんの手術や治療の影響などでリンパ液の流れが悪くなりむくんでしまう病気で、一度発症すると完治が見込みづらいと言われています。

主に婦人科系がんや乳がんの後遺症として発症し、推定約15万人の患者がいるそうです。進行性の病気なので、早期から継続的に弾性ストッキングの着用が求められますが、満足できる履き心地やファッション性のある医療用ストッキングがないと感じていました。

そこで、私たちは長年「美」に携わってきた経験と知識を活かし、ケアと美しさの両立を重視した医療用弾性ストッキングの開発に取り組みました。約100名の方にヒアリングを重ね、当事者の想いと医療従事者視点での意見を取り入れた、これまでにないビューティーを楽しめる商品が誕生しました。

がん患者もおしゃれをあきらめない、ソーシャルグッドな世界

ブランド名の「MAEÉ(マエエ)」には、自然と外に出たくなる、人に魅せたくなるなど、このストッキングを履くことで気持ちが前向きになってほしいという思いを込めました。

症状のケアはもちろん大事ですが、美を願う気持ちまでしめつけないようなお手伝いができたらと願っています。

私たちはファッションや美容を通じて「ありたい自分でいられること」は、人生のどんなシーンでも必要だと信じています。この事業を成功させて、誰もが美しくありたい気持ちを我慢しなくていい社会を創っていくことが目標です。このような取り組みは、SDGsが掲げる〝ソーシャルグッド〞な世界の実現に大きなインパクトを与えていくはずです。

また、年齢も経歴も違う二人で起業したことは、多様な視点を持つという意味で非常にいい結果をもたらしました。今後は、同じようにアンメット・ビューティー・ニーズに取り組む企業や団体とのパートナーシップを取り入れることで、一人でも多くの美に悩む方をサポートしていきたいと思っています。

事業が今後も継続的に発展していくためには、仲間を増やすことは欠かせません。SDGsでも「パートナーシップで目標を達成しよう」が掲げられていますが、同じ目的を持った方々との協業やコラボなども視野に入れながら、これからも、多くの方のビューティーのお手伝いをしていきたいです。


アートを通じてすべての人に心身の活力を届ける

株式会社ポーラ・オルビスホールディングスが運営するギャラリー「ポーラミュージアムアネックス」は、アートの力でSDGsの目標達成に貢献しています。印象派をはじめとする歴史的価値のある絵画を定期的に展示するほか、現代アートやデザイン、写真、建築、ファッション等、あらゆるジャンルを展示しています。

お客さまの感性を磨く場所として、また、新しいアートとの出会いの機会として、入場無料で提供しています。2018年10月にポーラ美術館収蔵のマルク・シャガール展では一般向けのイベントに加え、0〜2歳児の小さなお子さまと保護者の方向けの特別鑑賞会や認知症のある方を含めた高齢者を対象としたイベントも開催しました。

子連れ限定の鑑賞会では、アートに興味があっても、普段はなかなか美術館に行くことができないお母さま方に、お子さま連れでもゆっくり楽しんでいただくことができました。

また、お子さまには名画を見るという情操教育の機会提供ができたと思っています。認知症のある方を含めた高齢者とそのご家族を対象とした対話型鑑賞会では、参加者同士でのコミュニケーションによって感性が向上し、生きがいにつなげられたと感じました。

「誰一人取り残さない」展覧会を通じて、SDGsの「質の高い教養をみんなに」を実現できたことは、私たちにとっても大きな自信となりました。

また、2020年12月には新型コロナ感染症対策への支援を目的として、ギャラリー初のチャリティーオークション展を開催しました。その収益は合計914万5000円にものぼり、全額をコロナ支援として日本赤十字社へ寄付しました。

コロナ禍で大変な状況のなか、たくさんのお客様やアーティストのみなさまにご協力・ご支援いただき、日本赤十字社が行う医療活動に貢献できたことは望外の喜びです。今後もこうした活動を行い、SDGsの目標達成に貢献していく予定です。

「Christmas Smile」チャリティーオークション展示風景 ©POLA MUSEUM ANNEX

SDGsという言葉はテレビや新聞などで聞いたことがあっても、何をすればよいのか?実際に考えて行動に移せない人が多いと思います。だからこそ、いかに「自分のこと」にできるかが大切だと考えています。

例えば、以前に開催した写真家のレスリー・キー氏のLGBTをテーマにした展覧会では、事前にスタッフ全員でLGBTマナー研修講習を受講しました。研修後は、各スタッフが自分たちでできることは何かを考えて、話し合った結果、まずはトイレのマーク表示を見直し、性別やハンディーキャップに関係なくすべての人が使える表示に変更しました。

当館はアートを通じてSDGsを知ったり、興味を持ったり、さらにその先の未来のためにはどう行動すべきかを考えるきっかけをつくっていきたいです。これからも多様な表現を持つアートを通じて知的で刺激的な出会いを提供し、お客様のQOL向上のお役に立ちたいと思っています。

また、今まで経験したことがないコミュニケーションの場を創出することで、すべてのお客さまの『感受性』を刺激し、『もっと楽しく、もっと心豊かに。人生を変えていくこと』をお届けできるよう、努めていきます。

 

こんな会社で働きたい SDGs編』より転載。

 

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス 
株式会社encyclo 
ポーラ ミュージアム アネックス 
取材日:2020年12月18日
設立:2006年9月 
事業内容:ポーラ・オルビスグループ全体の経営管理 
資本金:100億円 
売上高:[グループ連結]2199億円(2019年12月期) 
所在地:〒104-0061 東京都中央区銀座 1-7-7 
電話番号:03-3563-5517 
URL:https://www.po-holdings.co.jp/
https://encyclo.co.jp/
https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/

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